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【レースな世界紀行2004】その8の3 [レースな世界紀行 2004]

サンマリノGPシリーズ(例によって、レースの話はしていません)は、今回で終了です。カレンダー落ちして久しいので、現地に足を運ぶことは、もうないのかな……。

その8の3
F1第4戦サンマリノGP
イタリア・トリノ〜ブリジゲッラ〜イモラ

土曜日にはグランドスタンドの側面にセナを讃える写真が飾られることになり、その除幕式が行われた。例によってイタリア語は理解不能なので、司会が何を言っているのかはわからなかったが、イモラ市の寄贈であることはなんとなくわかった。

参列者はセナの遺志を継いでセナ財団を率いる姉のビビアーニ、バーニー・エクレストンFOM会長、フェラーリのミハエル・シューマッハにルーベンス・バリチェロ。牧師が祈りを捧げ、赤い幕が引き上げられた。

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最後の年に所属したウィリアムズの青と白のレーシングスーツに身を包んだセナが手を挙げている。おそらく、観客席からの声援に応えてガレージの前で手を挙げて応えたときの写真だろう。「ありがとう」と言っているようにも見えるし、「さようなら」と言っているように見える。かすかに笑みをたたえた表情だが、どこか寂しげな印象をぬぐうことはできない。

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話は前後するが、金曜日の午前中、フリー走行が行われている最中にコースサイドを歩いた。イモラ・サーキット、いや、イモラ・サーキットは通称で正式にはエンツォ・エ・ディノ・フェラーリ・サーキットは、公園の中にコースが張り巡らされている。コースにばかり視線を集中させると、アスファルトやタイヤバリアやF1マシンやコースマーシャルくらいしか目に入らないが、緊張感をほどいて後ろを振り返ると、緑豊かな森で視界が一杯になる。木々の間を縫って小川が流れていたりもする。広い草地に木製のテーブルとベンチが置いてあったりもする。息を抜くのにぴったりだ。

セナの銅像は、そうした環境に囲まれている。銅像のアップ写真からは、周囲の環境は伝わらない。訪れて初めて実感する真実である。銅像はセナが激突をしたコンクリートウォールを、コース越しに見通す場所にある。F1マシンが甲高いエグゾーストノートを奏でて次々に通過する。周囲には僕を除いて人っ子ひとりいない。

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F1マシンが通り過ぎる際の轟音と、直後に訪れる静寂のコントラストの中で、セナの銅像の周囲は特別な空気に包まれていた。神聖な空気というのは、こういう空気を指すのだろうと思った。“神聖な”という表現が気取りすぎだとすれば、“異様な”と言い換えてもいい。とにかく、そこだけ空気が違っていた。空気の流れも時間も止まったような静けさを感じると同時に、何かに対して身構えずにはいられない緊張感を感じた。

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土曜日の同じ時間帯に訪れると、セナの銅像の周囲は、サーキットを訪れた観客に取り囲まれていた。まるで新選組隊士の墓の周囲のようににぎやかで、単なる観光名所のひとつにすぎなかった。

トヨタのクリスチアーノ・ダ・マッタと立ち話をした。ダ・マッタは2002年にCARTの年間チャンピオンを獲得し、その業績を引っ提げてF1に戦いの場を移した。チャンピオン・ドライバーだからといって、いきなり表彰台の常連になるほど、F1は甘くない。操る道具の実力が伴わなくては、いかに優れたドライバーをもってしても、レースでは後方集団に埋もれてしまう。F1参戦3年目のトヨタに、50年の伝統を誇るフェラーリと同等の実力を求めるのは酷だ。

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そんなわけで、ダ・マッタは久しく表彰台から遠ざかっている。そのダ・マッタに、CART時代に所属していたニューマン/ハース・チームから電子メールが届いた。送り主はブルーノ・ジュンケイラで、ダ・マッタと同じブラジル人。2月18日にロングビーチで行われたチャンプカー・シリーズの開幕戦で、2位入賞を果たした。
「ブルーノがメールを送ってよこしたんだけど、それに写真が貼付してあった」
「どんな?」
「表彰台でトロフィーを掲げている写真なんだけど、それにメッセージが添えてあって、『トロフィーがどんな形をしているか覚えているかい?』って書いてあった」
「ははは、それはご挨拶だね」
「それで、返事を書いて送り返してやったんだよ」
「何て書いたの?」
「トロフィーの形は良く覚えている。でも、オレが覚えているのは、2位のじゃなくて1位のだ、ってね。アイツまだ、優勝したことないんだよ」

http://www.facebook.com/serakota

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