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【レースな世界紀行2004】その7の1 [レースな世界紀行 2004]

なんだかこの先1ヵ月ほどは新鮮なネタをお届けできないようなムードになってきました。おかしいなぁ、こんなはずじゃ、と思いつつ時間が過ぎゆくばかり。そんなときは、昔を振り返って現実逃避……。

その7の1
F1第3戦バーレーンGP
バーレーン

バーレーンと聞いて何を思い浮かべるだろう。少なくとも僕の場合は、「中東」「アラブ」「イスラム」「(とくに最近は)危なそう」といったキーワードが思い浮ぶ。それも確固たるイメージではなくて、淡くぼんやりした頼りないものである。

そのバーレーンでF1グランプリが開催される。というので、土壇場になって情報を仕入れた。仕入れたところによると、バーレーンは島国である。首都マナーマのあるバーレーン島を含めて33の島で構成され、主要な島は橋で結ばれているという。国内の島同士が橋で結ばれているだけじゃない。隣国サウジアラビアとは全長なんと25kmの橋で結ばれているという。

 知らなかった。面積は707平方キロメートルだ。一体全体どれくらいの広さかというと、たいていの説明文には「奄美大島くらい」と書いてある。なかには「淡路島くらい」と書いてある。英語のインフォメーションには「シンガポールくらい」と書いてある。いずれにしても、実感が湧かない。ベースとなる知識が薄弱であるだけに、バーレーンに関することなら何もかもが新鮮だ。

人口は約70万人。そのうち4割はインドやフィリピンから来た出稼ぎ労働者だそう。公用語はアラビア語だが、1971年にイギリスから独立した背景を持つだけに、国民のほぼ100%が英語を話す。アラブの他の国の例にもれず、日中は暑く朝晩は涼しい砂漠性の気候だが、周囲を海に囲まれているだけあって、年中多湿。中東で初めて油田が発見された国ではあるが、石油は涸れ気味で、脱石油依存型の経済に移行する最中だという。

どんな経済かといえば、石油精製であったりアルミ精錬であったり、観光産業であったりする。このうち、観光産業の範疇に入るのが、F1グランプリの開催だ。モータースポーツの最高峰と位置づけられるF1グランプリは、各種のメディアによって世界中に報道される。こうした報道を通じてバーレーンの名を世界中に知らしめ、観光客を呼び込もうという魂胆。そうした魂胆のお先棒を担ぐ一員として、僕はバーレーンに飛び立った。

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成田はちょうど、新東京国際空港から成田国際空港へと名称を変更するタイミングだった。出国ゲートではきれいなコスチュームに身を包んだ令嬢が、「NAA」のロゴが入った緑色のバッグを配っていた。旅行客がそれを受け取っていた。その風景をテレビカメラが追いかけていた。僕はテレビカメラのフレームに入らないような努力をしながらも、バッグだけはちゃっかりもらえるような努力をして手荷物検査場へと足を運んだ。

新東京から成田へと名称が変わったことよりも、むしろ重要なのは公団から株式会社へと組織が変わったことである。果たして“成田”は魅力的な空港に生まれ変わるだろうか。生まれ変わってほしいなぁと心の底から思う。レースな世界紀行を通じていろんな国のいろんな空港を飛び立っては降り立ってはきたが、成田ほど退屈な空港を他に知らないからだ。

今回はタイ・バンコック経由でバーレーンに向かったのだが、バンコックの空港は、それはそれは楽しい空港だった。タイの名物料理を出すレストランがあったり、名産品を扱うショップがいろんな形態で店を構えていたり、足裏マッサージがあったり、長時間の乗り継ぎ待ちを過ごす人のためのデイ・ルームがあったりで、コンコースを歩いていて飽きないし、滞在して飽きないのである。

バンコック空港の場合は、どこか別の地へ行くための単なる通過点でなく、滞在点としての魅力を備えている。空港での滞在時間を積極的に増やすだけの価値がある。僕は空港の外に出た経験がないからバンコックという街を知らないし、タイという国がどういう国かも知らないが、行きと帰りに空港で何時間かを過ごしただけでもって、「タイっていい国なんじゃないか」と決めつけてしまっている。「今度は腰を落ち着けて街歩きをしたい」とも思っている。成田も人にそうした印象を与えるような雰囲気を持ってもらいたいと願っている。

で、観光産業に力を入れているバーレーンはどうだったかというと、バンコックにはまだまだ敵わない、というのが率直な感想だ。第一印象は大切だ。国際空港はその国の顔である。空港でいい印象を受ければ、その後の滞在が楽しくなるし、悪い印象を受ければ、これはちょっと覚悟したほうがいいなと身構えてしまう。残念ながら、バーレーン国際空港は後者であった。何より、華やかさに欠ける。

自動ドアが開いて到着ロビーの光景が目に入った途端、思わずおののいた。黒山のひとだかりが目に入ったからである。こちらを向く顔という顔、目という目が、誰かをまっているのか、何かを企んでいるのかが判然としない。それだけに不気味である。「タクシーいらない?」と、白タクにしつこくつきまとわれるようなことこそなかったが、一種異様な威圧感がある。

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ところが実際のことろ、この国の人たちはかなり人なつこい。まったくもってフレンドリーだ。それは会話をかわすなりして彼らに接してみればわかる。泊まる予定にしていたホテルでは、こちらの凡ミスで宿泊予定が1日少なかったにもかかわらず(つまり、着いた日の予約は入っていなかった!)、快く部屋を用意してくれたし、荷物は狭いロビーに3人いる従業員が先を争うようにして持ってくれるし、タクシーを呼んでほしいと言えば、電話をかけるでもなく、従業員が表に走り出てつかまえてくれる。

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別にホテルが用意したサービスじゃないだろうが、度重なる夜の襲撃には辟易した。あてがわれた部屋がたまたまホテル内にあるディスコの近くで、一晩中ドンチャカチャカチャカと重低音に悩まされたのはまだいいが、夜中の1時に電話を鳴らされてはたまらない。

「はい」
「ハロー」
「ハロー、どなたですか?」
「ビクトリアです」
「は? 部屋間違ってませんか?」
「間違ってないわよ。人生楽しんでる?」
「は? それどころじゃないんです。まだ仕事しているんですから(ウソ。本当は寝ている)」
「それは大変ね。これから楽しまない?」
「楽しみません。仕事しているって言ったでしょ」
「そんなこと言わないで」
「ごめんなさい、切りますよ」
「あら、残念ね」

受話器を置いた途端、隣の部屋でベルが鳴る音が、薄い壁を通して聞こえてきた。というようなやり取りのあった翌晩だったか、今度は夜中の3時に部屋のドアをドンドンと叩く音で目が覚めた。アラビア語だか、何語だか知らないが、女性が大声で叫ぶ声がする。ドンドンドンドン、●△■×。ドンドンドンドン、●△■×の繰り返し。寝られたもんじゃない。
(つづく)

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