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VRX30Aの最大熱効率は43%以上 [モータースポーツ]

毎年楽しみにしている『モータースポーツ技術と文化』(主催:公益社団法人 自動車技術会 会場:工学院大学アーバンテックホール)が3月1日に開催されました。今回のテーマは「進化し続ける開発手法の最前線」でして、シミュレーション技術に関する講演が目立ちました。

そのうちのひとつは、『レース用ガソリンエンジンにおける熱効率と燃焼の改善』(松村基宏氏/ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)でした。「レース用ガソリンエンジン」とは何かといえば、VRX30Aです。

それでもピンとこないと思いますので補足すると、2015年のル・マン24時間に参戦したNissan GT-R LM NISMOのために開発した、3.0L・V6直噴ターボエンジンのことです。

搭載車両はこちら↓

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エンジンはこちら↓

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話の中心はいかにタンブル流を使って混合気を気筒内に均質に分散させるか。それだけでは不十分で、点火タイミング付近で点火プラグ付近に濃い混合気を亜成層化することも重要……などという内容でした(だいぶはしょってます)。

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講演の冒頭でエンジンのスペックについて紹介があったのですが、「最高出力時の熱効率は43%以上」とサラッと説明がありました。エネルギー回生システムの1周あたりエネルギー放出量で2MJを選択(実際にはハイブリッド機能をキャンセルして走行)したGT-R LM NISMOの最大燃料流量は94.8kg/hでしたので、熱効率が43%だとすると450kW(612ps)を発生したことになります(規定によりエタノール20%混合ガソリン=E20を使用)。

公式スペックは「最高出力455kW以上、最大トルク900Nm以上」です。最高回転数が7000rpmと低いのも特徴で、4000rpmから7000rpmの範囲で最高出力を発生します。もちろん、理論空燃比(WECで使用するE20の場合13.6)よりもリーンで回していました。

サワリの話は当時うかがっていましたが、改めて詳細を聞いてみると、ごく短期間で活躍の場を失ったしまったのはいかにも残念です。

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フロント搭載・フロント駆動用に開発したVRX30Aを、ミッド搭載・リヤ駆動用に仕立て直したVRX30A evo.がLMP1(ノンハイブリッド)に参戦するバイコレスの車両に搭載されて2017年のWEC(世界耐久選手権)に出場することが決まっています。とても楽しみです。

どうやら、バイコレス側からの執拗なラブコールに重い腰を上げたようなニュアンスでした。エンジンを販売するのではなく、(機密保持の観点から)リースし、技術サポートを行うのだそう。

VRX30Aは、低い位置に空気の通り道を確保するため、ターボチャージャーが高い位置にあります。

VRX30A
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VRX30A evo.はごく一般的な位置にターボがあります。

VRX30A evo.
VRX30A.jpg

VRX30Aのサワリの話はこちらにまとめてあります↓



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