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タジマモーターコーポレーションのパイクスピーク参戦車両(空力) [モータースポーツ]

タジマモーターコーポレーション(静岡県磐田市)に、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(PPIHC)参戦車両の取材に出かけました。記事は発売中のMotor Fan illustrated Vol.126 エアロダイナミクスを可視化する (モーターファン別冊)に掲載されています。

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ひとくちにPPIHC参戦車両といっても、1980年代後半から振り返らなければならないので(途中、未参戦の期間もありますが)、対象車両は20台に達します。今回は企画に合わせ、泣く泣く「空力」にテーマを絞って話をうかがいました。車体やエンジンやサスペンションの話もうかがいたかったのですが、とても1日では足りません……。

自社風洞を見せていただきました。PPIHC参戦車両は20%スケールで試験を行っています。ムービングベルトに載っているのは、2016年型のTajima Rimac E-Runner Concept_One。EVです。

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風洞の概要です。施設貸しも行っています。

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(クリックで拡大)

スケールモデルの上方に位置する荷重センサーと車高調整装置。

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荷重センサーはスケールモデルの後方にもあります。ターンテーブルは20度まで角度変更が可能。

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1995年のSUZUKISPORT Twin Engine ESCUDOと2011年のMONSTER SPORT SX4 Pikes Peak Specialを見せていただきました。どちらかというとフロントの方が大事なのですが、迫力あるリヤに目を奪われます。

こちらは1995年仕様。

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4気筒ターボエンジンです。

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2011年の総合優勝車両。前後重量配分は53対47だそう。車重は1090kg。

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910ps/90.5kgmの高出力/大トルクを発生する3.1L・V6ツインターボエンジンです。

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まさにモンスター。



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メルセデス・ベンツE220d AVANTGARDE Sportsちょい乗り [クルマ]

メルセデス・ベンツの新世代ディーゼルエンジン、OM654(2.0L・直4)が載ったEクラスにちょい乗りしました。

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歴代のディーゼルが良く走るので、良く走るだろうなとは思っていましたが、実際、よく走りました。とくに燃費が良くなっている印象。自社製9速ATとの組み合わせですが、100km/hでは9速に入らず、8速で1400rpm付近です。

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エンジンルーム広いはずなのに、ぎっしり詰まっている印象。

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エンジン直下から床下にかけて一列に並んでいた排ガス後処理装置をエンジンの右側面に集約したのが特徴。そのスペースを稼ぐため、12mmのシリンダーオフセットは吸気側で行っています。

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後処理装置が結構な場所を占めているし、高圧&低圧EGRを成立させるためのコンポーネントは巡り巡っているしで、昨今のディーゼルエンジン、大変そうです。

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Robocarの実車、公開される [モータースポーツ]

ドライバーレスの自動運転電動車両によるロボレース(Roborace)は、実現に向けて開発が続けられています。2月27日にロボカー(Robocar)と呼ぶ競技車両の実車が公開されました。これまではレンダリングのみ公開されておりました。

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実車公開と同時に一部のスペックも公表されています。全長は4.8m、全幅は2m、車重は975kgです。300kWのモーターを4基と出力540kWのバッテリーを搭載し、320km/h以上の最高速に達する実力を備えているそう。

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自動運転の実現に用いる機器は下記のとおり。
・ライダー(LIDAR:レーザースキャナー)5基
・レーダー2基
・超音波センサー18基
・光学式速度センサー2基
・AIカメラ6基
・GNSS(衛星測位システム)

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各種センサーで得られた情報を処理するのは、NVIDIA製のDRIVE PX2で、人工知能を搭載したコンピューターです。参戦するチームは自動運転を実現するアルゴリズムを独自に構築して競技に臨みます。つまり、Roboraceはソフトウェアの技術力を競う競技です。

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これまで、フォーミュラEの開催会場ではDevbotと呼ぶ開発車両が展示されてきましたが、今後のイベントではDevbotの展示やデモ走行に加え、Robocarの展示も行うそう。

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下の写真は2月18日のブエノスアイレス戦会場で行われたDevbotのデモ走行風景です。Robocarが映えるようにDevbotはわざと格好悪くしている? ってことはないか……。

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2017年中には2台のRobocarによるデモ走行も予定しているそう。ということは、今シーズン中に予定していた実戦開始は先送り?

Devbotのデモ走行@ブエノスアイレス↓


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F1のエネルギー回生技術を投入したインフィニティのコンセプトカー [クルマ]

インフィニティ(Infiniti)は3月6日、ジュネーブ・インターナショナル・モーターショーで「プロジェクト・ブラックS(Project Black S)」を発表しました。3.0L・V6直噴ターボエンジン(VR30DDTT)を積んだインフィニティQ60クーペ(日本未導入)がベース。

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ルノー・日産アライアンスに属するインフィニティとルノー・スポール・フォーミュラワン・チームが手を組んで開発した車両で、コラボレーションの狙いは主に2つ。

・F1が搭載するエネルギー回生システム(ERS)の技術を量産モデルに転用すること。
・F1で扱い慣れたカーボンファイバーをボディワークに使用し、空力性能の向上と軽量化を図ること。

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プレスリリースにはっきりとした記述はないのですが、制動時のブレーキエネルギーを回生するモーター/ジェネレーターユニット(MGU-K)だけでなく、排気が持つ熱エネルギーを電気エネルギーに変換するモーター/ジェネレーターユニット(MGU-H)も搭載している模様。市販されれば、MGU-KとMGU-Hの2種類のERSを搭載する世界初の量産車になります。

F1由来のハイブリッドシステムを搭載することで、「パワー&トルクの増強」と「応答遅れのない加速」をもたらす、と説明しています。MGU-Hを搭載しているので(MGU-Hをアシスト側に使ってコンプレッサーを回転させることで)応答遅れを解消できるということなのしょう。出力は25%増しだと説明しています。エンジンの最高出力が400psだとすると、MGU-Kの出力は100psで合計500ps。

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テールパイプはチタン合金製。F1マシンにインスパイアされたディフューザー形状をしています。

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固定式のリヤウイングは2枚翼なのですが、フラップのトレーリングエッジはイエローに着色されています。ルノー・スポールF1のイエローに合わせたのでしょう。

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ブレーキキャリパーもイエロー。

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タイヤはピレリP Zeroを装着。リヤタイヤのサイズは245/35R21です。

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ボンネットフードに熱気抜きのアウトレットがあるのは、レーシングカーライクですね。

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ルノー・スポール・フォーミュラワン・チームとの密接なコラボレーションで生まれたと謳うインフィニティ流のハイパフォーマンスモデル、いかがでしょう。詳細知りたし。

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メルセデス・ベンツのF1と量産エンジンで共通するコーティング技術 [F1]

日本ではE220dが搭載するメルセデス・ベンツの最新ディーゼル、OM654(2.0L・直4)について調べていたところ、ある技術に出くわしました。

OM654
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OM654はスチール製ピストンを採用するなど、見どころの多いディーゼルエンジンですが、採用した技術のひとつにNANOSLIDE(ナノスライド)があります。溶射ボアなどとひとくくりに表現されるコーティング技術の一種です。

プラズマ放電を利用する方式もありますが、ナノスライドの場合はアーク放電を利用。鋼材を高温で溶かしてボアに吹きつけます。アルミブロックに鋳鉄ライナーを鋳込むより鉄の層を薄くできてブロックの小型・軽量化につながるのがメリットのひとつ。

ナノスライド(ツインワイヤーアークスプレー)の概略図はこちら↓

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(クリックで拡大)

ナノスライドに用いる線状の鋼材(鉄/カーボンのメタルワイヤー)です。これを高温で溶かしてボアにスプレーします。

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ナノスライド処理中。

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メルセデスの量産エンジンでは、2006年にAMGが導入した6.3L・V8ガソリンへの適用が最初。ガソリンV6やディーゼルのV6など順次適用が広がり、最新直4ディーゼルのOM654(2016年)にも適用されたというわけ。

で、その説明をするのに「メルセデス・フォーミュラ1のV6ターボエンジンにも効果的に用いられている」と記述があり、「ほぅ」と思った次第。レーシングエンジンにとっては当たり前な技術ですが、抜け目なくそれを量産エンジンの技術と結びつけるあたり、したたかという印象。他ブランドも見習って損はないかと……。

量産エンジンの技術とF1エンジンの技術はとくに2014年以降関連が深くなり、とくにナノスライドは「ダイレクトに転用できている例」だと訴えています。

F1エンジンです。

PU106B(2015年)
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アークスプレーコーティングを施す前の下準備として、アルミブロックのシリンダー内面を圧力3000barのウォータージェットでザラザラに仕上げます。コーティングの乗りをよくするためです。

その処理に使うランス(槍状の部材)はF1用と量産エンジン用で異なりますよ、という説明写真↓

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ウォータージェットによるザラザラ仕上げ処理が終わった後、アークスプレーコーティングを施す前に寸法をチェックします。

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最終仕上がり状態はこんな感じ(量産V6の例)。鏡面仕上げです。コーティングの厚みは0.1〜0.15mm。低フリクションと高耐久を実現する技術でもあります。

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F1で使っている技術と同じだと知ると、ありがたみは増すでしょうか。

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VRX30Aの最大熱効率は43%以上 [モータースポーツ]

毎年楽しみにしている『モータースポーツ技術と文化』(主催:公益社団法人 自動車技術会 会場:工学院大学アーバンテックホール)が3月1日に開催されました。今回のテーマは「進化し続ける開発手法の最前線」でして、シミュレーション技術に関する講演が目立ちました。

そのうちのひとつは、『レース用ガソリンエンジンにおける熱効率と燃焼の改善』(松村基宏氏/ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)でした。「レース用ガソリンエンジン」とは何かといえば、VRX30Aです。

それでもピンとこないと思いますので補足すると、2015年のル・マン24時間に参戦したNissan GT-R LM NISMOのために開発した、3.0L・V6直噴ターボエンジンのことです。

搭載車両はこちら↓

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エンジンはこちら↓

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話の中心はいかにタンブル流を使って混合気を気筒内に均質に分散させるか。それだけでは不十分で、点火タイミング付近で点火プラグ付近に濃い混合気を亜成層化することも重要……などという内容でした(だいぶはしょってます)。

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講演の冒頭でエンジンのスペックについて紹介があったのですが、「最高出力時の熱効率は43%以上」とサラッと説明がありました。エネルギー回生システムの1周あたりエネルギー放出量で2MJを選択(実際にはハイブリッド機能をキャンセルして走行)したGT-R LM NISMOの最大燃料流量は94.8kg/hでしたので、熱効率が43%だとすると450kW(612ps)を発生したことになります(規定によりエタノール20%混合ガソリン=E20を使用)。

公式スペックは「最高出力455kW以上、最大トルク900Nm以上」です。最高回転数が7000rpmと低いのも特徴で、4000rpmから7000rpmの範囲で最高出力を発生します。もちろん、理論空燃比(WECで使用するE20の場合13.6)よりもリーンで回していました。

サワリの話は当時うかがっていましたが、改めて詳細を聞いてみると、ごく短期間で活躍の場を失ったしまったのはいかにも残念です。

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フロント搭載・フロント駆動用に開発したVRX30Aを、ミッド搭載・リヤ駆動用に仕立て直したVRX30A evo.がLMP1(ノンハイブリッド)に参戦するバイコレスの車両に搭載されて2017年のWEC(世界耐久選手権)に出場することが決まっています。とても楽しみです。

どうやら、バイコレス側からの執拗なラブコールに重い腰を上げたようなニュアンスでした。エンジンを販売するのではなく、(機密保持の観点から)リースし、技術サポートを行うのだそう。

VRX30Aは、低い位置に空気の通り道を確保するため、ターボチャージャーが高い位置にあります。

VRX30A
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VRX30A evo.はごく一般的な位置にターボがあります。

VRX30A evo.
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VRX30Aのサワリの話はこちらにまとめてあります↓



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メルセデスとトロロッソだけ違う「ある部分」 [F1]

2017年のF1世界選手権に参戦する10チームの新型マシンが出そろいましたね。お気づきだとは思いますが、メルセデスとトロロッソだけ、他の8チームとスタイルが異なります。

Mercedes-AMG F1 W08 EQ Power+
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Toro Rosso STR12
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メルセデスとトロロッソのノーズ先端は、他とは違って評判の悪い「突起」がありません。レッドブルとマクラーレンを引き合いに出してみましょう。

Red Bull RB13
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McLaren-Honda MCL32
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メルセデスとトロロッソが他と異なるのはノーズだけでなく、フロントサスペンションのアッパーアーム、アップライト側取り付け部の様子(矢印)が異なります。まずは、一般的な例から(レッドブルの場合、ロワーアームの特異な形状も気になりますが……)。

Red Bull RB13
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McLaren-Honda MCL32
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メルセデスとトロロッソは、アップライトから腕を伸ばし、アッパーアームを高い位置でマウントしています。

Mercedes-AMG F1 W08 EQ Power+
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Toro Rosso STR12
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何が狙いなのでしょう? みたいな数々の問いかけを10チーム10台分、AUTOSPORT(オートスポーツ) 2017年 3/17 号 [雑誌]誌上で森脇基恭さんを相手に、掛け合い形式で行っています。

お楽しみに。



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