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自動運転レース車両の「ロボカー」とダニエル・サイモン [モータースポーツ]

自動運転車両によるレース、すなわちロボレース(Roborace)は、2016年秋に始まるフォーミュラEのシーズン3(2016/2017年)からスタートします。電動レース車両によるフォーミュラEと併催されます。

ロボレースを走るレース車両、ロボカー(Robocar)のプロトタイプが発表されました。フォーミュラEと同様に電動車両(電気自動車)。ドライバーの代わりに人工知能が車両を動かします。

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必要なダウンフォースはフロアで稼ぐコンセプトだそう。チーフデザインオフィサーを務めるダニエル・サイモンは、「今日一般的なソリューションよりも有機的かつシームレスな可動式ボディパーツを開発中」とコメントしています。

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ダニエル・サイモンといえば、映画『トロン:レガシー』(2008年)に登場する車両デザインを手がけた経歴がついて回ります。そのサイモン、2011年にはF1マシンのカラーリングを手がけています。

HRT F111です。

HRT F111
HRT_F111.jpg

詳細はこちら↓

HRT F111のメッセージ
http://serakota.blog.so-net.ne.jp/2011-02-10

2013年にWEC LMP2クラスに参戦したロータスT128のカラーリングもダニエル・サイモン作。

DanielSimon_LotusLeMans_LMP2_2013concept_01.jpg

HRT F111とロータスT128、実はつながりがあるのですね。詳細はこちら↓

ロータスのLMP2カーとダニエル・サイモン
http://serakota.blog.so-net.ne.jp/2012-10-30

HRT F111とロータスT128はカラーリングのみのかかわりですが、ロボカーは開発エンジニアらと情報を共有しながら、スタイリングを行っています。ダニエル・サイモン作であることを示すマークが確認できます。

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ロボレースのティーザー動画です↓

The Car of the Future is Here — Roborace


ロボカーが複数台走り回ってレースを行う様子、どうなるんでしょう。シーズン3の開幕が楽しみです。

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【WEC】ポルシェ919ハイブリッド新旧比較 [モータースポーツ]

ポルシェだけやっておかないと落ち着かないのでやっておきます。昨年も似たような流れでした……。

【2015年版】ポルシェ919ハイブリッド新旧比較↓
http://serakota.blog.so-net.ne.jp/2015-04-07

2015年はPrologue(WEC合同テスト)の前日に赤/白/黒の3台のマシンを披露したポルシェでしたが、2016年は1台のみを公開(サーキットには2台を持ち込んでいましたが)。

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「PORSCHE INTELLIGENT PERFORMANCE」のスローガンをあしらっている点に変わりはありませんが、ボディ上面は黒地になりました。コクピットの両脇に白いストライプ。サイドは白です。

Porsche 919 Hybrid_2016 Launch Version
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Porsche 919 Hybrid_2015 Rd.5 COTA
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空力コンセプトに変更はありません。2015年型は横風を受けたときや、姿勢が変化したとき(過渡領域)に不安定になる性質がありましたが、ありがたくないその特性を解消すべく開発を行なったそう。

Porsche 919 Hybrid_2016 Prologue
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Porsche 919 Hybrid_2015 Rd.5 COTA
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開幕戦シルバーストンに投入する仕様を持ち込んだプロローグでは、2日間全5セッションすべてでトップタイムを記録しました。対トヨタで比較すると、ポルシェ919ハイブリッドの最高速は301.7km/hだったのに対し、トヨタTS050ハイブリッドのシルバーストン仕様は323.4km/hを記録(ロードラッグ仕様の最高速は340.7km/hで、2015年のル・マンで記録した最高速を上回ります)。コーナーで速いポルシェ(かつ、1周をまとめても速い)、ストレートで速いトヨタの構図です。

サイドビューの新旧比較に引っ張り出した「旧」はローンチ仕様ですので、フロントフェンダー前端は切り立っており、サイドのルーバーの処理も異なっています。第4戦ニュルブルクリンク以降は、フェンダーもルーバーも、2016年型に似た形態。

Porsche 919 Hybrid_2016 Prologue
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(クリックで拡大)

Porsche 919 Hybrid_2015 Launch Version
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(クリックで拡大)

2015年の後半戦仕様は、フェンダー後部を車両中心線側に延長した処理が特徴でした。2016年型はカウル後端を大きく跳ね上げています。リヤフェンダーに義務づけられている開口部は「上」です。2015年型も第3戦ル・マンまでは「上」でした。

比較:ポルシェ919ハイブリッド・ニュルブルクリンク仕様↓
http://serakota.blog.so-net.ne.jp/2015-09-03

Porsche 919 Hybrid_2016 Prologue
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Porsche 919 Hybrid_2015 Rd.5 COTA
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量産車との共通性を意識した4眼LEDのヘッドランプは、LED素子を増やすことで光量アップが図られています。

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リチウムイオン電池はA123システムズ製の円筒形セル(直径1.8cm×高さ7cm)を使用。

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【WEC】トヨタTS050ハイブリッド新旧比較 [モータースポーツ]

昨年も同じことをやっていたので、今年もなぞってみましょう。例年どおり、ポールリカール・サーキットで開催されるWEC合同テストの前日に、新型マシンのトヨタTS050ハイブリッドが発表されました。

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一見して、これまでの流れを受け継いだ空力コンセプトであることがうかがえます。「ブラッシュアップ」ですね。規則の変更によって使える燃料は約10%減るけれども、制動時の回生エネルギー量を確保するためにも、最高速は維持したい──。

黙っていれば出力は10%落ちるので、ドラッグ(空気抵抗)を減らして最高速を維持するコンセプトです。ダウンフォースを失ってはコーナリング性能が落ちるので、ダウンフォース量を維持したままドラッグを減らす難題に取り組んだそう。

Toyota TS050 Hybrid_2016
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Toyota TS040 Hybrid_2015
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フロントカウルが高くなって、アンダーパネルとの隙間が大きくなっています。TS040ではブレーキダクトがカウルに設けられていましたが、TS050ではカウルの影に隠れたボディワークに設けられています。

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Toyota TS050 Hybrid_2016
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Toyota TS040 Hybrid_2015
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パワートレーン系の変更点は以下のとおり。

エンジン:3.7L・V8自然吸気→2.4L・V6直噴ツインターボ
エネルギー貯蔵装置:キャパシタ→リチウムイオン電池
ル・マン1周あたりのエネルギー放出量:6MJ→8MJ

Toyota TS050 Hybrid_2016
TS050_rear.jpg

Toyota TS040 Hybrid_2015
TS040_rear.jpg

フロントだけでなくリヤでも回生/力行を行うハイパワー4輪回生なのは変わりありませんが、回生量を増やすためにMGUの出力は引き上げられています。また、モノコック下を通る空気の流れの自由度を高めるため、フロントMGUの搭載位置は上に移動させています(ゆえに、MGUは新設計)。

いくらエンジンが小さくなったとはいえ(V8もコンパクトでしたが、新しいV6は相当小さいらしい)、ターボチャージャーが2基加わって、インタークーラーも2基あって……ということを考えると、カウルの下、どうなっているんだろうと、気になりますね。

Toyota TS050 Hybrid_2016
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Toyota TS040 Hybrid_2015
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レイズ製マグネシウム鍛造ホイールは2015年仕様から受け継いでいます。2015年型とは仕様が一部異なるよう。

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ブレーキキャリパーは2013年以来のパートナーである曙ブレーキ工業製。運動エネルギーの回生量が増えているので、油圧ブレーキの負担分が小さくなり、カーボンディスクを適正作動温度領域に保つのに苦労しているそう。冷やすことよりもむしろ、暖めることの方が課題。

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TS030(2012〜13年)〜TS040(2014〜15年)〜TS050(2016年〜)のハイブリッドパワートレーンの変遷をまとめた動画↓

From TS030 to TS050 HYBRID - Evolution of TOYOTA's WEC Challenger


下の動画で、TS050ハイブリッドの開発を通じて培った技術は、「未来のクルマにつながる」と表現していますが、話をうかがっていると、確かにそんな気がします。そんなに先じゃない市販車も楽しみですし……

TOYOTA GAZOO Racing – FIA WEC 2016 TS050 HYBRID: PROFESSIONAL PRIDE


WEC(FIA世界耐久選手権)の2016年シーズンも楽しみです。

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【WEC】トヨタ、ポルシェ、アウディの同アングル観測 [モータースポーツ]

WEC(FIA世界耐久選手権)のPrologue(合同テスト)2日目です。トヨタは1日目の午前と午後のセッションでル・マン24時間レースを念頭に置いたロードラッグ仕様を走らせました。ナイトセッションでは開幕戦シルバーストン向けのハイダウンフォース仕様にスイッチ。2日目もハイダウンフォース仕様を走らせています。

こちらはテスト初日のロードラッグ仕様。公式写真や、テスト前日の記念撮影に現れたのはハイダウンフォース仕様。

Toyota TS050 Hybrid / Low Drag Spec.
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ハイダウンフォース仕様との相違点として即座に指摘できるのは、フロントフェンダーの形状とカナードの有無(ロードラッグ仕様はカナードなし)、リヤウイング翼端板です。

Toyota TS050 Hybrid / Low Drag Spec.
TS050_LDG_side.jpg

Toyota TS050 Hybrid / High Downforce Spec.
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ハイダウンフォース仕様はフロントフェンダー前端を寝かせ、ロードラッグ仕様はフェンダー前端(ヘッドランプハウジングのカバー)を立たせる手法は、2015年までのアプローチと同様。

2015年版「WEC LMP1 3車の同アングル観測」↓
http://serakota.blog.so-net.ne.jp/2015-03-28-1

ロードラッグ仕様の翼端板はこんな感じで、(ほぼ)三角です。

Toyota TS050 Hybrid / Low Drag Spec.
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では、2016年のWEC LMP1-Hに参戦するトヨタ、ポルシェ、アウディの3車を見比べてみましょう。3車ともカラーリングが変わって黒地が目立ちます。アウディは異形。3車とも、開幕戦シルバーストンを念頭に置いたハイダウンフォース仕様です。

Toyota TS050 Hybrid / High Downforce Spec.
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Porsche 919 Hybrid / High Downforce Spec.
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Audi R18 e-tron quattro / High Downforce Spec.
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まだテストを半日残していますが、ハイダウンフォース仕様に関して言うと、ポルシェとトヨタが争っていて、アウディは少し離されている?

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【WEC】アウディとポルシェの気になるディテール [モータースポーツ]

24日の出来事です。17時から集合写真を撮るので、マシンが三々五々、コースに出てきました。アウディR18 e-tronクワトロの2016年仕様、写真では確認していましたが、実物の迫力は二次元の世界で受ける比ではなく、異様な風体にギョッとします。

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最終的にはこんな感じできれいに整列するのですが、20台以上をきれいに並べないといけないので、それなりに時間がかかります。その間、気になるマシンの気になるディテールを眺めるチャンス。ディテールが気になるのはエンジニアやメディアばかりではなく、ドライバーも……。

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ポルシェのマーク・ウェバーがアウディのサイド部をのぞき込んでいました。

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トヨタTS050ハイブリッドも気になるらしく……。

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他車のディテールを堂々とのぞき込んでも、自分のクルマに足を載せても誰からもとがめられないのは、ドライバーだから?

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ウェバーがのぞき込んでいたアウディR18 e-tronクワトロのサイドからフロントへの「抜け」はこんな感じです。前方にガイドベーンが並んでいるのが確認できます。

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集合写真の先頭にはトヨタTS050ハイブリッド、ポルシェ919ハイブリッド、アウディR18 e-tronクワトロのLMP1-H勢3車が並びましたが(全車、カラーリング一新しましたね)、極端なハイノーズになったアウディの前にだけ人が並んでガードしています。フロントのディテール、とくにカウルの下を見られない(撮られない)ようにするため。

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人が立つ前にチラッと覗いたところ、こんなふうでした(車両左側。向かって左寄りに見えるのがアンダーパネルを支えるステー)。ドライブシャフトに大きな下反角がついているのが確認できます。

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ポルシェのドライブシャフトを見てみると、アウディのドライブシャフトがいかに急角度でフロントMGUからホイールセンターに向かっているかが分かります。

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LMP1-H勢3車を横から眺めてみると、ウインドスクリーンとフロントセクションの位置関係から、アウディのコクピットがだいぶ後退しているのがわかります。

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ポルシェ919ハイブリッドですが、リヤから眺めた際は「ずいぶん大きなガーニーフラップがついているな」と早合点したのですが……。

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フロント側から眺めてみると、いったん深く落ち込んだカウルが大きく反り返っているのでした。

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ポルシェがポールリカールに持ち込んだのは、開幕戦シルバーストンに持ち込むハイダウンフォース仕様。トヨタはテスト初日にロードラッグ仕様のシェイクダウンを行っていました(集合写真撮影時はハイダウンフォース仕様)。なので、ストレートでの最高速は30km/h以上違います(トヨタは午前のセッションで338.6km/hを記録。ポルシェは301.7km/h)。

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【WEC】合同テスト前日の慌ただしい一日 [モータースポーツ]

3月25日〜26日の日程でWEC(FIA世界耐久選手権)の合同テストが開催されます。開催地は南仏ポールリカール・サーキット。昨年と同様、マルセイユ空港から北西方向に50km弱、ジェムノに泊まってサーキットに向かいました。

昨年の様子「フォード・フィエスタ1.6・直4ディーゼルで走るホテルからサーキットまで」↓
http://serakota.blog.so-net.ne.jp/2015-03-29

ホテルを出てしばらくは、前にルノー4がいました。見るからに「頑張っている」って感じのコーナリング姿勢でした(助手席で撮影)。

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パドックでひときわ目を引いたのは、GTを走らせるフォードのトランスポーターでした。

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リヤも目を引きます。

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目を引くのはトランポばかりではありません。ガレージで見かけた台車が粋です。

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マシンのカラーリングを一新したトヨタは、トランポのカラーリングも一新していました。横のトランポとの間隔が狭かったので、うまく撮影できませんでした(悪しからず)。

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車検場で見かけたアウディR18 e-tronクワトロです。じろじろ見られたくないし、撮影されたくないので、カバーを掛けたままなのでしょう。

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正式発表前なこともあり(?)、トヨタTS050ハイブリッドもカバーを掛けたままでした。

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そのトヨタTS050ハイブリッド、10時半からスタート/フィニッシュライン上でお披露目されました。

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小林可夢偉選手をはじめ、ドライバーや首脳陣から話を聞かせてもらいます。

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14時からはポルシェ919ハイブリッドの記念撮影。

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「キミたち、こういうアングルでも写真撮りたいんでしょ」と、角度を変えてくれました。ありがたい。

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資料を受け取り、トヨタと同様に話を聞かせてもらいます。

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17時からは(マシンの)集合写真の撮影。ディテールを間近で観察するチャンスです。そのとき様子はまた改めて……。

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【検証】アウディR18 2016年仕様(アップデート版) [モータースポーツ]

2016年の合同テスト(Prologue:3月25日〜26日/ポールリカール)を前に、本戦仕様のカラーリングと技術の詳細が発表されました。よく見ると、いやちょっと見ただけで、2015年11月末に発表された仕様とは形状が異なることがわかります。

【検証】アウディR18 e-tronクワトロ・2016年仕様↓
http://serakota.blog.so-net.ne.jp/2015-11-29

アウディR18の2016年仕様に関しては、2015年11月28日の段階で以下のような概要が発表されていました。

・ディーゼルエンジンを踏襲。
・エネルギー貯蔵装置は電動フライホイールからリチウムイオンバッテリーに変更。
・1周あたりエネルギー放出量は、4MJから6MJに変更(4段階あるうちの上から2つめ)。
・これまで3台エントリーしていたル・マンには2台を投入(グループ企業のポルシェも同様)。

今回新たに発表された技術詳細のうち、いくつか抜き出してみましょう。

・ディーゼルエンジンはバンク角120度の4.0L・V6シングルVGTターボを踏襲。ただし新設計。
・これまでどおり、フロントMGUで回生/力行を行う(リヤMGUは非採用/熱エネルギー回生システムも非採用)。
・フロントMGUの出力は350kW(2015年は200kW)。

ル・マン24時間に限り、MGUの出力は上限が300kWに定められますが、上限が設けられるのは力行側(アシスト側)だけで、回生側に制限はありません。1周あたり6MJを回生するためにも、大きな出力が必要だったとアウディは説明しています。

2016年ル・マン24時間の燃料テーブル↓
http://serakota.blog.so-net.ne.jp/2015-12-14

そうじゃないの? と勘ぐられてはいましたが、2016年仕様は前後連携サスペンション(リンクド・サスペンション・システム:LSS)を搭載していると公表しています。

では、2016年仕様の2016年3月バージョンと2015年11月バージョン、あるいは2015年仕様と見比べてみましょう。

Audi R18 2016 spec. 2016/3 ver.
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Audi R18 2016 spec. 2015/11 ver.
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極端に細く、極端に高い位置に配されたノーズに変わりはありませんが、なんだか様子が違います。先に細かなところを指摘しておくと、プッシュロッドがうまくカウルに隠れています(矢印)。

それより、フロントフェンダーの形状がまったく異なります。真っ当に予測すると、2015年11月に発表されたのは低ドラッグ重視のル・マン仕様、2016年3月に発表されたのは、その他のサーキットで用いるハイダウンフォース仕様にも見えるのですが……。

Audi R18 e-tron 2016 spec. 2016/3 ver.
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Audi R18 2016 spec. 2015/11 ver.
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(クリックで拡大)

リヤセクションは初めて公開されました。テールパイプの位置が変わっています(矢印)。以前に公開された画像からも明らかでしたが、リヤフェンダー開口部は上面から側面に移っています(矢印)。リヤフェンダーの絞り込みやカクカクした造形が目を引きます。

Audi R18 2016 spec. 2016/3 ver.
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Audi R18 e-tron quattro 2015 spec. 2015/3 ver.
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スリムなノーズ〜フロントバルクヘッド断面は、ドライバー着座位置を後ろに下げることで実現した? と考えたくなるのですが、どうでしょう。2015年仕様と2016年仕様のドアの後端位置を矢印で示しています。目を引くディテールもありますが、それはまた改めて……。

Audi R18 2016 spec. 2016/3 ver.
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Audi R18 e-tron quattro 2015 spec. 2015/3 ver.
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完全な同アングルではありませんが、俯瞰でも見比べておきましょう。以前のエントリーでもお知らせしましたが、フロントフェンダー上面開口部の規定が変わっており、2015年に比べて大型化しています。

ダズル迷彩柄のアウディR18 e-tronクワトロ2016年仕様↓
http://serakota.blog.so-net.ne.jp/2015-12-25

しかし、ノーズ細いですねぇ。フロントカウルもずいぶん後退していますし。

Audi R18 2016 spec. 2016/3 ver.
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Audi R18 e-tron quattro 2015 spec. 2015/3 ver.
R18_1503_top.jpg
(クリックで拡大)

技術詳細を追加しておくと、変速段は2015年の7速から2016年は6速に減らして軽量化を図っています。低速側はMGUでアシストできるし、エンジンが幅広い回転領域で十分なトルクを発生できれば、変速段数は少なくて済みます。変速段数は少なければ少ないほど、カッコイイですね。

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メルセデス、レッドブル、マクラーレンのカウルに見る空力コンセプトの印象 [F1]

メルセデスAMGとレッドブル、マクラーレンのエンジンカウルを見比べてみましょう。まずは、3車のサイドビューから(マクラーレンの画像は左右反転)。

Mercedes AMG W07
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Red Bull RB12
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McLaren MP4-31
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エンジンカウルは中央部とサイドで分割するのが一般的です。例えば、メルセデスAMG W07はこんなふう。中央部とサイド部の分割線が確認できます。

Mercedes AMG W07
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どんなに精密に組み付けても、パネルとパネルの合わせ目で段差が生じ、その段差が空気の流れを乱してしまうのでしょう。それを嫌って(?)、レッドブルは左右と中央のカウルを一体化して成形しています。メンテナンス性は悪くなりますし、精度高く成形する技術も必要でしょう。

タグホイヤーのバッジを付けている実質ルノーのパワーユニットは、メルセデスAMGなどに対してパワー面でハンデを負っているので、空力の邪魔になる要素を少しでも減らしたい。そんな姿勢がカウルの設計に表れています。加えて、レッドブルのクルマはドラッグ(空気抵抗)を極力減らす空力コンセプト、という指摘を多く聞きます。強いレイク角もそうですが、ドラッグを増やさずに必要なダウンフォースを発生させる考えを徹底しているよう。

Red Bull RB12
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メルセデスAMGはパフォーマンス面で圧倒的優位に立っているので、レッドブルのような細かな気遣いは無用ということでしょうか。エンジンカウルは分割しています。一方、マクラーレンもメルセデスAMGと同様で、エンジンカウルは分割型。

McLaren MP4-31
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ホンダ製パワーユニットは2015年に比べて大幅に進化したとはいえ、メルセデスAMGと肩を並べるレベルにまでは達していないでしょう(と、考えるのが普通です。後発ですので)。パワーのハンデを低ドラッグの空力コンセプトで補おうと設計しているのがレッドブルなら、マクラーレンはパワーがあることを前提にした空力コンセプトに見えます。

サイドポンツーンまわりのごてごてした処理を見ると、いかにもドラッグが大きそう。

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真相はわかりませんけどね。そんな印象です。

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告知:MFi114『ポルシェの水平対向4気筒直噴ターボエンジン』 [クルマ]

ポルシェが新開発した4気筒水平対向直噴ターボエンジン(2.0L/2.5L)の解説記事が載ったMOTOR FAN illustrated Vol.114 PLUG-IN (モーターファン別冊)が3月15日から発売されています。

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ページはこんなふう(テキスト類はダミーです)。左が718ボクスターが搭載する4気筒、右は911カレラが積む6気筒です。どちらもターボエンジン。様子の違いがおわかりいただけると思います。

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2.0Lと2.5Lでは、ターボチャージャーの仕様が異なります。そして、どちらも水冷インタークーラーを採用。

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燃焼室の内部も覗いてみました。インジェクターや点火プラグの位置がわかります。エキゾーストマニフォールドのレイアウトにも特徴がありますね。詳しくは、記事でご確認ください。

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タクシードライブ(同乗走行)の際にドライバーの説明を録音していたのですが、当然のことながら4気筒水平対向直噴ターボエンジン(2.5L)が奏でる音も入っていましたので、一部抜き出してアップロードしておきます。ローンチコントロールモードで発進し、250km/h近辺に達するまで(ルーフは閉じています)。途中でシフトダウンするのはコーナー(バンク付き)に差し掛かるからです。



ところで、連載2回目を迎えた『F1テクノロジー考』のテーマは、2016年版テールパイプです。こちらも、どうぞごひいきに。

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「サイズゼロ」なHondaクラリティFUEL CELL [クルマ]

ホンダの新型燃料電池自動車、クラリティFUEL CELLが発表・発売されました(3月10日)。

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発表会場はHonda青山ビル1階・ウエルカムプラザ青山でした。プレゼンテーション終了後、展示物を観察します。「燃料電池パワートレーンを世界で初めてフロントフード下に収めた」のが、クラリティFUEL CELLの特徴のひとつです。

新型クラリティFUEL CELLのパッケージング
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(クリックで拡大)

従来型は燃料電池(FC)スタックがセンターコンソールに収まっていました。

従来モデル
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空力性能を高めるためにパワーユニットのコンパクト化にこだわったマクラーレン・ホンダMP4-30(2015年)とMP4-31(2016年)がF1版の「サイズゼロ」(コンパクト化を徹底するコンセプト)なら、クラリティFUEL CELLで実施した燃料電池パワートレーンのコンパクト化は、居住性や量産性を向上させる「サイズゼロ」ですね。

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昇圧コンバーター(最大500V)のパワーモジュールにSiCを使用。SiCの使用は(当面リース販売ですが)量産車として世界初で、従来技術を採用した場合に比べて約40%容積を小型化したと説明しています。

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エンジン積んでいないのでラジエター要らないんじゃ……と思いがち(?)ですが、そうはいかないのです。前からエアコン用コンデンサー(1)、モーターなどの高電圧部品用ラジエター(2:LLC)、燃料電池スタック用ラジエター(3:絶縁冷媒)です。FCスタックへの空気の供給量を増やすデバイスに電動ターボ型コンプレッサーを使っているのも目を引きますね。

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FCスタック用ラジエターを循環する冷媒はエチレングリコール系ですが、イオン交換フィルター(矢印)を用いて絶縁性能を持たせます。イオン交換機を搭載しているのはトヨタMIRAIと同じ。

「トヨタMIRAIはどこから空気を吸ってる?」はこちら↓
http://serakota.blog.so-net.ne.jp/2014-11-21

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70MPaの高圧水素タンク(タンク内容積141L。MIRAIは122.4L)は、アルミライナー製のタイプ3(MIRAIはプラスチックライナー製のタイプ4)。タイプ3/タイプ4ともフルラップで補強。

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走りはもちろんのこと、着座位置など、いろいろ気になりますね。そういえば、ボルボXC90もウォッシャーノズル内蔵のワイパーアームを採用していましたが、クラリティFUEL CELLも採用。外気温と車速に応じて噴射出力を制御するそう。採用例、増えていきそうですね。

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