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【F1】ホンダはメルセデスに追いついたか [F1]

ホンダは6月23日、報道関係者向けに『Honda F1 2020 シーズンプレビュー オンライン』を開き、HRD Sakura Honda F1 PU開発総責任者の浅木泰昭氏がパワーユニットの開発について説明しました。

2018年1月1日から開発の総責任者を務める浅木氏は、「メルセデスに追いつくのが目標で、どうにか3勝させていただくことができた」と2019年シーズンを振り返ります。

「言い訳資料」と呼ぶのが下のスライドです。

Honda_2020_6.jpg
(クリックで拡大)

「(ホンダは他メーカーに比べ)始めるのが遅かったものだから、なかなか馬力で追いつけませんでした」という言い訳に使っていたのだと。

しかし、「これを出すのも今年で最後かな」と付け加えました。

ホンダの推定どおりなら、2019年のシーズン後半にはメルセデスやフェラーリに追い付いていそう。このペースでいけば2020年は……?

7月4日に行われた開幕戦オーストリアGPの予選結果から判断すると、メルセデス(1番手、2番手)とホンダ(レッドブル。約0.5秒遅れの3番手、5番手)の差はまだありそうです(パワーユニット以外の要因もラップタイムに影響するので、決めつけることはできませんが)。

いっぽうで、フェラーリの失速ぶり(7番手、11番手)も目立ちます。

下のスライドは、現行パワーユニット規定のポイントです。浅木氏は「燃料流量規制が根幹」と説明しました。

Honda_2020_1.jpg

ホンダの第2期(1983年〜92年)や第3期(00年〜08年)は、「どれだけ燃料をたくさん燃やすか」が勝負でした。

Honda_2020_2.jpg

現在(現行規定の導入は14年。ホンダの参戦は15年から)は、「燃料量」が制限されているので、「いかに熱効率を上げるか」の勝負になります。

100kg/hを上限とする燃料流量はFIAが指定する燃料流量センサーで監視するのですが、これが「グレーゾーン」で、「センサーをごまかす考えかたもあるかもしれない」と浅木氏は言います。暗にフェラーリのことを指しているのでしょうか。

しかし、「FIAもそんなことできないように取り組んでいますので、(2020年は)本当の熱効率勝負になってきているのが現状です」と話しました。

本当の熱効率勝負になったので、フェラーリは失速した、というのは勘ぐりすぎ?

下の図はパワーユニットのシステム構成を示しています。

Honda_2020_3.jpg

「特徴的なのはMGU-H。ターボにモーターが付いています。そこからの電気の出し入れは無制限で、監視されていないのが特徴的。勝負どころはここです」

「ここ(MGU-K)の計測、2MJ(MGU-K→バッテリー)、4MJ(バッテリー→MGU-K)の計測をごまかせば速くなるんですが、そこもごまかすことができないように、というのがいまのFIAの流れです」

意味深長な説明が続きます。

下の図は、MGU-K(運動エネルギー回生システムのモーター/ジェネレーターユニット)とMGU-H(熱エネルギー回生システムのモーター/ジェネレーターユニット)の代表的な使い方を説明しています。

MGU-Kはクランク軸につながっています。MGU-Hはターボチャージャーと一体となった構造。

Honda_2020_4.jpg

MGU-Hの使い方は「2つある」と浅木氏は説明してくれました。

1つは、「排気エネルギーで過給圧を上げ、余力を持たせた分を発電にまわして、足軸モーター(MGU-K)に電気を回す」使い方。

もう1つは、「バッテリーから(MGU-Hの)モーターを駆動して、過給圧をモーターによって作る。そうすると、ウェイストゲートが開いて排気圧力を下げることができる。それによってエンジンパワーが出る」使い方です。

「1周をどう戦うか。または数周、どこで電気を溜めてどこで使うというエネルギーマネジメントをやりながら戦っています」

下の図は、ホンダの開発体制です。「オールホンダ」で戦っていることを示しています。

Honda_2020_5.jpg

新型コロナウイルスの影響を受け、2020年シーズンのスケジュールは大幅に変わりました。

あわせて、2020年中のパワーユニットのアップデートは禁止されました。

オーストリアGPには、本来であれば最初のアップデート版である「スペック2」を投入しているはずだったのですが、シャットダウンの影響があったため、本来より小規模なアップデートを施した「スペック1.1」を投入しているそう(シーズン中アップデートは禁止されたので、この状態で最終戦まで乗り切ります)。

Honda_2020_7.jpg

「ホンダジェットの技術を使わせてもらっていますので(ターボチャージャーの効率が高く)、(2019年は)オーストリアにしてもメキシコにしてもブラジルにしても、標高が高いところは結構いけているかなと。ただ、標高が低いところはまだ負けているというのが、去年終わったときの私なりの分析でした」

「平地でメルセデスに追いつくことを目指してきたんですが、本当に達成できたかどうかは開幕でわかる」

「今年こそはパワーユニットでなんとか追いついて、メルセデスとホンダはどっちが勝ってもおかしくない1年を過ごし、結果としてシリーズチャンピオンが獲れたらな、というのが今の私の目標となっております」

さて、どうでしょう。決勝が楽しみです。

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メルセデスPUからエンジンブローし始めかと思うほど白煙が上がるのが度々見られましたが, あれは何だと考えられますか。
レーシングポイントが特に顕著で, 1Lap目のルクレールと並走しているときや2Lap目の1コーナーの立ち上がりなどではっきり確認できました。
by お名前(必須) (2020-07-07 01:13) 

世良耕太

白煙のでもとが確認できていないのですが、フリクションロスを減らすためピストンリングの張力を低減→オフスロットル時(無負荷時)は燃焼圧が低くなるので、リングをシリンダー壁面に押さえつける力が弱くブローバイガスが発生(ここまでは想定内)→いつもよりエンジンオイル量が多かったため(?)ブローバイにオイルが混入して白煙が派手に発生。
あるいは、オイル量がいつもより多かったためにオイルレベルが高く(または、ポンプなど何らかの原因でレベルが高くなってしまい)、無負荷時に燃焼室にオイルが上がり、大量の白煙発生。ということでしょうか。
by 世良耕太 (2020-07-08 02:04) 

お名前(必須)

急な質問にも関わらずご返信いただきありがとうございます。
大変勉強になります。
F1機械工学大全の続編も期待しております!
by お名前(必須) (2020-07-13 00:15) 

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