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メルセデス・ベンツのF1と量産エンジンで共通するコーティング技術 [F1]

日本ではE220dが搭載するメルセデス・ベンツの最新ディーゼル、OM654(2.0L・直4)について調べていたところ、ある技術に出くわしました。

OM654
OM654_cutaway.jpg

OM654はスチール製ピストンを採用するなど、見どころの多いディーゼルエンジンですが、採用した技術のひとつにNANOSLIDE(ナノスライド)があります。溶射ボアなどとひとくくりに表現されるコーティング技術の一種です。

プラズマ放電を利用する方式もありますが、ナノスライドの場合はアーク放電を利用。鋼材を高温で溶かしてボアに吹きつけます。アルミブロックに鋳鉄ライナーを鋳込むより鉄の層を薄くできてブロックの小型・軽量化につながるのがメリットのひとつ。

ナノスライド(ツインワイヤーアークスプレー)の概略図はこちら↓

nanoslide_1.jpg
(クリックで拡大)

ナノスライドに用いる線状の鋼材(鉄/カーボンのメタルワイヤー)です。これを高温で溶かしてボアにスプレーします。

nanoslide_6.jpg

ナノスライド処理中。

nanoslide_3.jpg

メルセデスの量産エンジンでは、2006年にAMGが導入した6.3L・V8ガソリンへの適用が最初。ガソリンV6やディーゼルのV6など順次適用が広がり、最新直4ディーゼルのOM654(2016年)にも適用されたというわけ。

で、その説明をするのに「メルセデス・フォーミュラ1のV6ターボエンジンにも効果的に用いられている」と記述があり、「ほぅ」と思った次第。レーシングエンジンにとっては当たり前な技術ですが、抜け目なくそれを量産エンジンの技術と結びつけるあたり、したたかという印象。他ブランドも見習って損はないかと……。

量産エンジンの技術とF1エンジンの技術はとくに2014年以降関連が深くなり、とくにナノスライドは「ダイレクトに転用できている例」だと訴えています。

F1エンジンです。

PU106B(2015年)
PU106B_Hybrid_02.jpg

アークスプレーコーティングを施す前の下準備として、アルミブロックのシリンダー内面を圧力3000barのウォータージェットでザラザラに仕上げます。コーティングの乗りをよくするためです。

その処理に使うランス(槍状の部材)はF1用と量産エンジン用で異なりますよ、という説明写真↓

nanoslide_4.jpg

ウォータージェットによるザラザラ仕上げ処理が終わった後、アークスプレーコーティングを施す前に寸法をチェックします。

nanoslide_5.jpg

最終仕上がり状態はこんな感じ(量産V6の例)。鏡面仕上げです。コーティングの厚みは0.1〜0.15mm。低フリクションと高耐久を実現する技術でもあります。

nanoslide_2.jpg

F1で使っている技術と同じだと知ると、ありがたみは増すでしょうか。

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たけのこ

この溶射技術はダイムラーとルノー・日産アライアンス提携時に日産に技術転用されMR系のエンジンに使用されています。またVR30系にも使用されています。
元々日産は別の溶射技術をVR38に使用していましが他に転用できずにいました。

by たけのこ (2017-03-08 22:19) 

世良耕太

コスト面からワイヤーアークに流れたようですね。
by 世良耕太 (2017-03-08 23:32) 

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