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「燃料」に関するレギュレーションと燃料流量センサー [F1]

「失格」の背景には伏線があったのですね。F1世界選手権第1戦オーストラリアGPで、レッドブルのダニエル・リカルド選手が2位に入りましたが、「100kg/hの最大流量をコンスタントに超えた」という理由で失格になりました。

2014年のF1テクニカルレギュレーションでは、約305kmのレース中に消費できる燃料の「量」に関して、次の2種類を定めています。

1. 最大燃料使用量:100kg(約133L)
2. 最大燃料流量:100kg/h(1時間あたり100kg、1秒あたり約27.8g/約37cc)

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最大燃料流量はもっと細かく規定されていて、100kg/hが適用されるのは10500rpm以上です(最高回転数は15000rpm)。時間あたりの噴射量を増やせないので、高回転まで回す意味が薄いですね。予選中継時、オンボードカメラの映像にエンジン回転数などの情報が映る場面がありましたが、せいぜい11000rpm台でした。

10500rpm以下では「エンジン回転数×0.009+5.5kg/h」の計算式が適用されます。10000rpmなら95.5kg/h、9000rpmなら86.5kg/hです。

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リカルドのマシンは「100kg/hの最大流量をコンスタントに超えた」ということなので、状況的には10500rpm近辺、あるいはそれ以上の領域で常にしきい値を超えていたと推察することができます。もっと下の回転域から超えていたら大胆ですね。

燃料に関する2種類の量を監視するため、今シーズンから全車共通の燃料流量センサーを搭載することが義務付けられています。イギリスのジル・センサーズ製。

Racecar Engineeringが詳しく説明しています↓
http://www.racecar-engineering.com/news/red-bull-faces-disqualification-for-breaking-f1-fuel-rules/

超音波で流量を計測するのですが、開発段階から計測精度が問題となっていました。公式的には±0.25%の精度(100kg/h時の誤差は±0.07g/0.09cc以下)を保っていることになっています。レッドブルはこのセンサーが示す数字が信頼性に欠けていたと主張。指定の燃料流量センサーを信用せず、自前のセンサーとモデルに従って「量」を計測/計算し、規定の範囲内で走行しました。例えば、直噴インジェクターが燃焼1サイクルあたりに噴射する燃料の量は標準ECU(マクラーレン・エレクトロニック・システムズ製TAG-320)でも管理していますので、それを積算することでも「量」は導き出せます。

ところが、FIAがモニターした数値は規定を超えていた。表向きはテクニカルレギュレーションの違反ですが、ルールを統轄するFIAとしては、ルールに従わないレッドブルの態度がおもしろくない。その心理が今回の動きに少なからず作用したことでしょう。

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実際のところ、流量の計測は難しいようです。WECのLMP1でも同じジル・センサーズ製の燃料流量センサーを使うのですが、「なかなか大変」だという話は漏れ伝わってきています。LMP1はまだいいんです。ガソリン(E20)だけでなく軽油もあってそれはそれでやっかいなのですが、燃料はシェルの1社供給ですので。

F1の場合はチームによって燃料が異なります。温度によって密度や粘度が変わるだけでも計測がやっかいなのに、メーカーごとに物性が異なってはやっかい極まりないというわけです。

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今回の騒動、尾を引きそうですね。

http://www.facebook.com/serakota

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Fanatic

計測精度の問題はあったにせよ他のチームで違反が指摘されてない以上レッドブルは言い逃れできないでしょう。
リカルドは地元で初表彰台だっただけに残念です…
by Fanatic (2014-03-17 21:27) 

世良耕太

FIAの指示に従わなかった時点でこうなることはある程度予想できたわけで、一番の被害者は罪のないリカルドですね。
by 世良耕太 (2014-03-17 22:55) 

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