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【レースな世界紀行2004】その11 [レースな世界紀行 2004]

気がついたら1ヵ月半ぶりのアップです。このままフェードアウトしてもよかったのですが、残りあと少しなので最後まで行かないと落ち着かない(性分)。8年前を振り返ってみて思いましたが、ハンガリーはまだユーロに移行していませんね。それに、あのドライバーのキャラクターも変わっていない……。

その11
F1第13戦ハンガリーGP
ハンガリー・ブダペスト

出発前に宿泊するホテルのホームページを見たら、宿泊料やら市内へ向かうバスの料金やらがユーロで書かれていた。あれ? ハンガリーはもうユーロに切り替わったんだっけ? と30%くらいは不審に思いつつも70%は疑いもせず、乗り継ぎのフランクフルトで2万円をユーロ(1ユーロ146.98円)に交換し、ブダペストに降り立ってみれば、市内へ向かう乗り合いバスの料金はもちろん、売店で売っているピーチ味の紅茶だのドレハーという地元のビールだの、ことごとくすべてがフォリント表示であった。

フォリントとはすなわちハンガリーの通貨である。仕方がないので、せっかく両替をしたユーロのうち、50ユーロをフォリントに交換した。1ユーロは240フォリントだった。円〜ユーロ〜フォリントで両替した場合の100円はおよそ、61フォリントということになる。

ハンガリーがユーロに切り替わっていてもおかしくないと70%くらい信じ込んでしまったのにはワケがあって、この国は訪れるごとに何もかもが西側っぽくなってくのを、初めて訪れてからわずか7年ではあるけれど、感じ取っていたからである。調べてみたところEU加盟は2004年5月1日に行われたばかり。だが、ユーロへの通過切り替えは当分行われず、今後もフォリントを使い続けるのだという(2007年頃に切り替わるらしい)。国民の所得水準はいざ知らず、物価だけで言えば、いつEUの仲間入りをしてもおかしくないほどの高水準だった。

1年に一度訪れるかどうかの観光客にとっては、ありがたくない話だ。かつての東欧諸国の面影を感じさせる石張りの建物は相変わらず街を埋め尽くしているし、ドナウ川越しに眺めるブダ王宮の夜景も以前と変わらず美しい。が、どことなく街全体があか抜けて、明るいのである。

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もっと薄暗く、うち沈んでいてこそハンガリーであり、ブダペストだよなぁと思う。優雅な装飾のある建造物に割って入り込むように、フランクフルトの新市街にこそ似合いそうなガラスと金属のオフィスビルやショッピングモールが建っている。高速道路に乗って郊外に足を伸ばせば、24時間営業のショッピングモール。アメリカ資本の巨大ハンバーガーチェーンもそこかしこでお目に掛かった。

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まったくもってかつての東欧諸国らしくない風景だが、これが現在のハンガリーなのである。東側名物のひとつであるトラバントに出会うことができたのは幸運だったが、これも早晩消えゆく運命だろう。ぴっかぴかの最新モデルが我が物顔で街を走り回っている。

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前年はヨーロッパを猛暑が襲い、イタリアやフランスでは暑さのせいでお年寄りが1万人単位で亡くなったというニュースが世間を騒がせた。当たり前だが、地理的にはいまだにヨーロッパの東側に位置するハンガリーも例外ではなく、猛暑に襲われた。

そんな状況ではあるのに、前年はサーキットに近いことを最優先して、エアコンを装備していないホテルに泊まったのだが、これが災いした。暑いなんてもんじゃない。あてがわれた部屋が暑さに輪を掛けた。屋根裏部屋だったからである。こぢんまりしたホテルの4階にあるのだが、エレベーターがないので、階段をよいこらよいこら上ってドアを開けると、日中の日差しでたんまりと暑くなった空気が出迎えてくれるという寸法である。これはこたえた。

というわけで、今年はエアコンを優先。サーキットからのアクセスには目をつぶり、ブダペスト郊外にあるエアコン完備のホテルを予約した次第。ところが、えてしてそういうもので、朝晩は長袖が欲しくなるくらい、この年はいい気候に恵まれた。あぁ。

郊外に宿を取ったツケは自由時間にも回ってきて、いつもなら夕食の前や後にドナウ川岸を散歩して露天などを冷やかして歩くのだが、一切そんなヒマはなし。グラーシュスープやパプリカチキンとも無縁の夜を過ごした。

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ならば、レースに集中するしかないか。前回のF1取材は6月のこと。インディアナポリスで行われた第9戦US GPを訪れたのだが、あれから2カ月。4戦ぶりにF1サーキットを訪れてみると、第13戦ハンガリーGPで、またもや佐藤琢磨選手が予選3番手に食い込むガンバリを見せつけてくれたのだった。前回もフェラーリのミハエル・シューマッハ、ルーベンス・バリチェロに次ぐ3番手なら、今回もフェラーリの2台に次ぐ3番手である。

シーズン前半戦で数々の追い越しシーンを見せていたためか、ヨーロッパのジャーナリストにも佐藤選手の果敢な攻めの姿勢が十分に浸透したと見えて、予選終了後の記者会見では佐藤選手にこんな質問が飛んだ。

質問 あなたは今シーズンこれまでいくつか興味深い追い越しシーンを見せていますが、このサーキットは追い越しに向かないサーキットだと思いますか? と。

確かに、全長4.381kmのハンガロリンクは市街地コースのモナコに次ぐ低速サーキットとして知られる。ストレートは短く、タイトなコーナーは数多く、路面はいつも砂ぼこりで汚れている。

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佐藤 難しいですね。確かに、一昨年まではほとんど追い越しができないサーキットでした。でも、去年から変わったと聞いています。僕は去年出場していないのではっきりしたことは言えないのですが、確か去年のレースではいくつか追い越しがあったと思います。だから、追い越しは可能でしょう。でも、このサーキットは風が強く、路面が汚れているので、レーシングラインを外すと滑りやすいのが特徴です。追い越しを仕掛けるには大きなリスクを覚悟しなければなりません。

質問 でも、あなたにはリスクを冒す覚悟がある。
佐藤 ええ、この世に不可能なことはありません。いいファイトを期待していいと思います。

「いや、追い越しなんて、そんな。予選で3番手になれただけでハッピーです」と優等生的な発言でお茶を濁すことも可能だったろう。それが、どうだ。佐藤選手は周囲の期待どおりの回答を臆することなくプレゼントしてくれる。たとえそれがリップサービスであろうと、聞いているこっちは気持ちが良くなるというものだ。

スタート直後に先行を許したアロンソをかわそうと、1コーナーでアウト側のラインを選んだ佐藤選手だったが、これが裏目に出た。タイヤが路面の汚れを拾ってスピードが鈍り、前を追いかけるどころか、後続に次々と先行を許すことになったのである。結果、最初の1周で5つポジションを落とし8番手にまで後退。レース中盤以降はエンジンの油圧低下に不安を抱えながらの走行を強いられたが、6位まで挽回してレースを終えた。自身の言葉どおり、ガンガン攻めてました。

http://www.facebook.com/serakota

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