【レースな世界紀行2004】その10の2 [レースな世界紀行 2004]
そろそろ先が見えてきました。もう間もなくの辛抱(?)です。
その10の2
F1第8戦カナダGP〜第9戦US GP
カナダ・モントリオール〜アメリカ・シカゴ〜ロサンゼルス〜インディアナポリス
「飛行機あそこよ」
彼女が指さした先を見ると、150メートルほど先に小型のジェット旅客機が止まってお尻を向けている。雨に濡れながらタラップに飛びつかんとしている客も何人か見えた。ダッシュしたが、急いだところでどうにかなる雨の量じゃない。席に着いた頃には全身ずぶ濡れである。満員の乗客も同様だ。が、不平を言う者はいない。
予定より13時間遅れてモントリオールに降り立ったはいいが、荷物は届かなかった。いわゆるロストバゲッジというヤツである。とりあえず、GAPで2日分の着替えを買い、スーパーマーケットで歯ブラシとペースト、カミソリとシェービングジェルを買ってホテルにチェックインした。
「来ないから心配したよ」と言われて初めて、ホテルに連絡をしていなかったことに気づいた。
荷物は2日後の朝に届いた。その間、何度も航空会社に問い合わせをしたが、応答はなし。いや、正確に言えば、応答はあるにはあるのだが、アンサリングマシーン、つまり、テープに録音された声が流れるのみである。
「ただいま混雑しております。しばらくそのままお待ちください」
というようなことを繰り返し言っているのだが、そのまま待っていたところで一向にらちが開かない。腹が立つとはこのことである。荷物が届くかどうかも分からないので、3日分の着替えを追加で買ったが、買ったその翌日に荷物が届いたので、追加で買った分は無駄になった。スーツケースに空きスペースがないので、買った着替えを詰め込むだけのためにプーマでバッグを買った。
数日後、ロサンゼルスからインディアナポリスへ向かう際にシカゴを経由したときも、シカゴ〜インディアナポリスの便が3時間遅れた。さらに数日後、シカゴから成田に飛ぶ便も2時間の遅れ。遅れっぱなしの旅であった。
インディアナポリスに来ていたロジャー安川選手にいきさつを説明すると、
「アメリカはそうなんですよ」
と語り、ニヤリと笑う。アメリカ生活が長いゆえ、相当思い当たる節がありそうである。
「バーバー・ダッジに出ていた頃の話なんですが、飛行機が遅れに遅れて結局キャンセルになり、レース当日の朝に現地入り。しかもそこは初めて走るサーキットだったので、まさにぶっつけ本番でレースしたことがあります」
アメリカに長く住んでいる人でもそういうことがあるのか、と感心しきりで、レースの結果がどうだったのか聞くのを忘れてしまった。やっぱり、ぶっつけ本番じゃ、ツライだろうな。
そんなこんなを抜きにして、ひとたびカナダやらアメリカに上陸してしまえばこっちのもんである。とくに、モントリオールはF1観戦の環境としては最高だ。ニュルブルクリンクしかり、マニクールしかりで、サーキットはその特性からして人里離れた山間部にあることが多い。人里離れていようと山の中だろうと、それはそれで楽しみ方もあるのだが、市街地の近くにあれば楽しさは倍増する。カナダGPの舞台、モントリオールはまさにそういう環境にある。
どういう環境にあるのかと言えば、銀座からお台場に通うような感覚でサーキットに行けるのである。ジル・ビルヌーブ・サーキットはセントローレンス川の中州に設けられた公園にあるのだが、川と言っても神田川や目黒川のように小規模なものではなくて、大陸のそれらしく見事な川幅を誇っている。だから、ホント、お台場のようなのだ。人工海浜もあるし。
スタンド裏に行ってみると、売店やら仮設トイレやらが並んでいるが、その裏手に回ると砂浜がある。ご丁寧に、監視員が座る背の高い椅子まである。日焼け止めクリームに特有のあまーい香りが漂っている。
もちろん、あまーい香りが漂っているだけではなくて、実際に(水着を着けた)裸の男女が砂浜に横たわっているのである。それも、相当の数がいる。ほんの数十メートル離れたところで、F1マシンが轟音を発しながら走り回っているまさにそのときに。
「F1見に来たんだからF1だけじっくり見ていればいいんだ」という発想ををするのが日本人なら、「砂浜があるんだから甲羅干しでもしようよ」という発想をするのがカナダ人なのだろうか。
額に手をかざして遠方を見やれば、摩天楼がそびえている。これが、河口に立ち並ぶモントリオールの街並みである。お台場の海浜から芝浦やら浜松町やらを眺めたときの感じとよく似ている。銀座やら芝浦やら築地に泊まってお台場へF1を見に行く、なんて夢のような話だが、モントリオールのF1は実際そんな感じだ。
F1開催期間中、街が浮かれたようにはしゃいでいるのもモントリオールの特徴だ。深夜、街の中心部に設けられた特設ステージでバンドが生演奏をし、通りはただなんとなく集まってきたクルマでごった返し、歩道という歩道は人で埋まっている。歩いているだけでいい気分になる。
(つづく)
http://www.facebook.com/serakota
その10の2
F1第8戦カナダGP〜第9戦US GP
カナダ・モントリオール〜アメリカ・シカゴ〜ロサンゼルス〜インディアナポリス
「飛行機あそこよ」
彼女が指さした先を見ると、150メートルほど先に小型のジェット旅客機が止まってお尻を向けている。雨に濡れながらタラップに飛びつかんとしている客も何人か見えた。ダッシュしたが、急いだところでどうにかなる雨の量じゃない。席に着いた頃には全身ずぶ濡れである。満員の乗客も同様だ。が、不平を言う者はいない。
予定より13時間遅れてモントリオールに降り立ったはいいが、荷物は届かなかった。いわゆるロストバゲッジというヤツである。とりあえず、GAPで2日分の着替えを買い、スーパーマーケットで歯ブラシとペースト、カミソリとシェービングジェルを買ってホテルにチェックインした。
「来ないから心配したよ」と言われて初めて、ホテルに連絡をしていなかったことに気づいた。
荷物は2日後の朝に届いた。その間、何度も航空会社に問い合わせをしたが、応答はなし。いや、正確に言えば、応答はあるにはあるのだが、アンサリングマシーン、つまり、テープに録音された声が流れるのみである。
「ただいま混雑しております。しばらくそのままお待ちください」
というようなことを繰り返し言っているのだが、そのまま待っていたところで一向にらちが開かない。腹が立つとはこのことである。荷物が届くかどうかも分からないので、3日分の着替えを追加で買ったが、買ったその翌日に荷物が届いたので、追加で買った分は無駄になった。スーツケースに空きスペースがないので、買った着替えを詰め込むだけのためにプーマでバッグを買った。
数日後、ロサンゼルスからインディアナポリスへ向かう際にシカゴを経由したときも、シカゴ〜インディアナポリスの便が3時間遅れた。さらに数日後、シカゴから成田に飛ぶ便も2時間の遅れ。遅れっぱなしの旅であった。
インディアナポリスに来ていたロジャー安川選手にいきさつを説明すると、
「アメリカはそうなんですよ」
と語り、ニヤリと笑う。アメリカ生活が長いゆえ、相当思い当たる節がありそうである。
「バーバー・ダッジに出ていた頃の話なんですが、飛行機が遅れに遅れて結局キャンセルになり、レース当日の朝に現地入り。しかもそこは初めて走るサーキットだったので、まさにぶっつけ本番でレースしたことがあります」
アメリカに長く住んでいる人でもそういうことがあるのか、と感心しきりで、レースの結果がどうだったのか聞くのを忘れてしまった。やっぱり、ぶっつけ本番じゃ、ツライだろうな。
そんなこんなを抜きにして、ひとたびカナダやらアメリカに上陸してしまえばこっちのもんである。とくに、モントリオールはF1観戦の環境としては最高だ。ニュルブルクリンクしかり、マニクールしかりで、サーキットはその特性からして人里離れた山間部にあることが多い。人里離れていようと山の中だろうと、それはそれで楽しみ方もあるのだが、市街地の近くにあれば楽しさは倍増する。カナダGPの舞台、モントリオールはまさにそういう環境にある。
どういう環境にあるのかと言えば、銀座からお台場に通うような感覚でサーキットに行けるのである。ジル・ビルヌーブ・サーキットはセントローレンス川の中州に設けられた公園にあるのだが、川と言っても神田川や目黒川のように小規模なものではなくて、大陸のそれらしく見事な川幅を誇っている。だから、ホント、お台場のようなのだ。人工海浜もあるし。
スタンド裏に行ってみると、売店やら仮設トイレやらが並んでいるが、その裏手に回ると砂浜がある。ご丁寧に、監視員が座る背の高い椅子まである。日焼け止めクリームに特有のあまーい香りが漂っている。
もちろん、あまーい香りが漂っているだけではなくて、実際に(水着を着けた)裸の男女が砂浜に横たわっているのである。それも、相当の数がいる。ほんの数十メートル離れたところで、F1マシンが轟音を発しながら走り回っているまさにそのときに。
「F1見に来たんだからF1だけじっくり見ていればいいんだ」という発想ををするのが日本人なら、「砂浜があるんだから甲羅干しでもしようよ」という発想をするのがカナダ人なのだろうか。
額に手をかざして遠方を見やれば、摩天楼がそびえている。これが、河口に立ち並ぶモントリオールの街並みである。お台場の海浜から芝浦やら浜松町やらを眺めたときの感じとよく似ている。銀座やら芝浦やら築地に泊まってお台場へF1を見に行く、なんて夢のような話だが、モントリオールのF1は実際そんな感じだ。
F1開催期間中、街が浮かれたようにはしゃいでいるのもモントリオールの特徴だ。深夜、街の中心部に設けられた特設ステージでバンドが生演奏をし、通りはただなんとなく集まってきたクルマでごった返し、歩道という歩道は人で埋まっている。歩いているだけでいい気分になる。
(つづく)
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