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【レースな世界紀行2004】その9の3 [レースな世界紀行 2004]

本当はケルシュやヴァイツェンのほうが好きなんですけど(と、強がり)。

その9の3
F1第7戦ヨーロッパGP
ドイツ・デュッセルドルフ〜ケルン〜シャルケンメーレン〜ビットブルク

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素直にビットブルガー行きを諦めたのかといえば、そうではなかった。サーキット行って酒好きの同好の士に「ビットブルガーに行こうと思うんですけど、かくかくしかじかで」と誘い水を向けると、同好の士は同好の士で、泊まっている宿の人に頼んで“開いているかどうか”について独自に調査をしてくれた。それが月曜日の朝のことである。

結果、どうも芳しくないことが判明した。電話をすれどもすれども、応答メッセージが流れるばかりだというのだ。
「ということはつまり、今日はやっぱり休みだってことですかね」
「そうだな。でも、宿の人が言うには、掛けている電話番号が代表番号だから、きっとオフィスの人間は休んでいるんだろう。でも、工場見学やスーベニア・ショップは開いているかもしれないって言うんだよ」
「そうですか」
「そうなんだよ」
「うーん……」
「どうする?」
「行きます?」
「行くか?」
「行きますか」
てな具合で、行くことになった。時間もあったし。

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50km離れたビットブルクには45分で着いた。休日のためドライブに出かけるクルマ(は総じてウィークデーを走るクルマに比べてのんびり走る)が多かったのだが、アベレージスピードは高かった。道中、ラウンドアバウトは何カ所か通過したが、運転のリズムを著しく削ぐ信号などはなく、移りゆく美しい景色を眺めながらの快適なドライブであった(おっさんふたりだが)。

ほんの思いつきで決めたので、きちんと下調べをしなかったのだが、ビットブルガーはずいぶん規模が大きいのだろう。ビットブルクの町に入った途端、迷うことなく目的地にたどり着いた。町がこぢんまりしていることもあるが、工場もデカイのだ。そそくさとクルマから降りて門の前まで言ってみたが、門を叩くまでもなく、休みであっることが判明した。門を閉じていることは明々白々なのだが、信じたくない。よって、往生際のよろしくない発言が飛び出すことになる。

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「ここじゃないのかもしれないですね」
「そうだな、入り口は別の場所にあるのかもしれない」
裏口へ回ってみたが、人っ子ひとりいる気配がない。運良く守衛室を見つけたので、中にいるお兄さんに「今日は休みですか?」と質問してみた。
「休みは土曜日と日曜日。月曜日から金曜日まで開いているよ」
「え?」
 色めき立つビール好き。
「月曜日はやってるの? 今日は月曜日ですよね」
「あ、そうだ」
と思い出したように守衛のお兄さんは言う。
「今日だけは休みなんだよ」

死刑の宣告を受けたような心持ちだった。予測していたことではあったのだけれど、事実をズドンと突きつけられると逃げ場がない。守衛のお兄さんにもらったパンフレットを手にビットブルガーの門前で呆然と佇んでいると、散歩の途中であろう地元の熟年夫婦が近づいてきて、「どうしたの? 何か困ってらっしゃるのかしら?」と労るような口調で話しかけてきた。

「いえ、何でもないんです。工場見学に来たんですけど、休みだったんですよ」
「また明日来ればいいじゃない」
「今日の夜の便で日本に帰らなければいけないんです」
「あら、それは残念ね」
我々の気持ちをおもんぱかり、夫婦で仲良く沈んでくれた。異国の人であろうと、困っている姿を見ると声を掛けてくれる。ドイツ人のこうした姿勢に心が温かくなった。

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が、いったん沈んだ気持ちは浮き上がって来ようとしない。というわけで、門前に口を開けているレストランに吸い込まれるようにして入った。短いドイツ滞在に心残りのないようにと、白アスパラガスを注文。当初はひとりひと皿ずつ平らげるつもりでいたが、ひょっとして多すぎるかもと思い、店員を呼び止める。
「アスパラガスなんですけど、ひと皿に何本くらい載ってます?」
「えーと、何本だったかしら? ひと皿300グラムなんですけどね」
「300グラム?」

と聞いても何本なのか、想像ができない。アスパラガスには太いのもあれば、細いのもあるだろう。太いのが8本と細いのが8本では、細いのに当たった客が不公平である。その点、300グラムであれば不公平感がない。まことに合理的だ。

ことほどかように、ドイツでは数字にきっちりしている。ビールのグラスには0.2Lだの0.3Lだのと目盛りが打ってあり、店はきっちり目盛りまでビールを入れなければいけない決まりになっている。アスパラガスだって、300グラムと言ったからにはきっちり300グラム入っているのだろう。

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あるグランプリ関係者に聞いた話である。その人が泊まったホテルの朝食はビュッフェ形式であったが、ゆでたまごに2種類あって、一方には「7分」、他方には「5分」と表示があったそう。日本ならさしずめ「固め」と「柔らかめ」といった表現になるのだろうが、固めや柔らかめは主観で決まる。その点、5分や7分に主観が介入する余地はない。

ドイツとはそういう国である。だから、休みだと言えば休みなのである。あー、悲し。
(つづく)

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