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【レースな世界紀行2004】その8の1 [レースな世界紀行 2004]

2012年シーズン始まりましたね。8年前の思い出話は第4戦。2006年を最後に、開催されなくなった土地です。例によって、レースそのものの話はしておりません……。

その8の1
F1第4戦サンマリノGP
イタリア・トリノ〜ブリジゲッラ〜イモラ

久しぶりのイタリアである。特別イタリアに思い入れがある(スペインにもある。なぜならメシと酒がうまいから)ので、珍しくイタリア語会話のハンドブックなぞ携えて機上の人となった。向かった先はトリノだ。レーシングスーツやヘルメット、グローブやシューズなど、ドライバーが身につけるレース用品を主に扱うスパルコという会社を訪れた。

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スパルコ(SPARCO)は1977年の創業で、2人のラリードライバーが興した……というから、スパなんとかさんとルコなんとかさんが興した会社かといえばさにあらず。英語のスパーク(SPARK=火花)をイタリア語風にアレンジしたのが由来だという。なぜ、火花なのかといえば、車両火災からドライバーの身を守る耐火スーツを開発・製造・販売する目的で会社を興したからだ。

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そんな興味深いストーリーを語ってくれたのは、スパルコのブランド・アンド・M&T・ディレクターを務めるマリオ・コレッティさんだった。

「道に迷うといけないから」とコレッティさんは取材当日、わざわざ僕が泊まっているホテルまで迎えに来てくれた。イタリア人であるにもかかわらず(?)、約束の時間よりもかなり早くホテルに来てくれた。スパルコに転職する以前は、潤滑油を扱う会社に勤め、イギリスにいたというから、そこで身につけたマナーだろうか、と想像する。

「イタリアの外で10年働いたからね。そろそろ戻りたいと思っていたところで、スパルコからいい話が来た」

BMW330Xのステーションワゴンをスマートに操りながら、コレッティさんが話す。といっても、転職して1年。まだトリノには不案内とみえて、ホテルから工場まではナビシステムのルート案内を頼りにしていた。通るべきオーバーパスをやり過ごしてしまったときなどは、「つい、話に熱中しちゃって」と茶目っ気たっぷりにごまかしてみせた。
「キミは運がいいよ。2日前までは冬みたいに寒かったんだ。ところが今日は夏みたい。アルプスがきれいに見えるだろ。天気が悪いと何も見えないんだから」
 アウトストラーダの左右に雪をかぶった峰峰が見える。

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「日本にもアルプスと呼ばれる地域があるんですよ」
「知っているよ。前の会社にいたときに何度か行ったことがある。富士山はきれいだよね。ほら、見えるかい、あの山。あの山の上に僕の家があるんだ。部屋からアルプスが見渡せるんだ」

うらやましい限りである。工場ではカーボンファイバーを使った製品の製造工程を見学した。カーボンファイバーを使って何を作るのかといえば、F1用のヘルメットであり、市販車用のシートであり、市販車のボディに取り付ける空力パーツであったりする。この会社はフェラーリの最上級モデル、エンツォのアンダートレイやシートを作っているのが自慢である。

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零下18℃の保管庫からカーボンファイバーの素材を引っ張り出してくるのも、コンピューター制御のカッティングマシンを操るのも、モールドにカーボンファイバーのシートを張り込んでいくのも、完成品が設計通りに出来上がっているかどうかチェックするのも、すべて女性であった。
「なぜ、女性が多いんですか」
と質問すると、山のてっぺんに住んでいるコレッティさんはエスプレッソを引っかけながら、こう説明するのだった。
「手作業は女性が一番さ。それに、なごむだろ?」

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サンマリノはイタリア北東部にある面積わずか61平方キロメートルほどの共和国だ。世界で5番目に小さい国で、切手やコイン、ワインや陶器などを観光の目玉としている。面積707平方キロメートルのバーレーンを訪れたばかりなので、「ははーん、バーレーンの10分の1よりもちょっと小さいくらいか」と見当をつけたが、調べてみれば東京の大田区(59・46平方キロメートル)や世田谷区(58・08平方キロメートル)よりわずかに大きい程度である。

それはさておき、F1サンマリノGPはサンマリノ共和国では開催しない。アドリア海に近いサンマリノ共和国から100kmは内陸に寄った、イモラという牧歌的な風景の広がる小さな街に1周4.933kmのサーキットがあり、ここでレースを行うのを常とする。どうしてこんなややこしいことをするのかと言えば、F1は1国1グランプリが原則だからだ。イタリアでは例年9月に、ミラノ近郊のモンツァという町でイタリア・グランプリを開催している。

でも、イタリアのことである。あのフェラーリのお膝元である。ティフォシと呼ばれる熱狂的なフェラーリ・ファンがいる。1年に1回では飽き足らず、どうしても、もう1回イタリアでF1を見たい。というわけで1980年以降、モンツァに加えてイモラでF1が開催されている。イタリア・グランプリはすでに存在するので、近く(といっても100km南東)に位置するのを幸い、サンマリノの名前を借りて開催しているのだ。

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こうした例外は他にもあって、ミハエル・シューマッハの活躍でF1人気沸騰中のドイツでは、ホッケンハイムで行うドイツGPのほかに、ニュルブルクリンクで行うヨーロッパGPがある。かつては、ルクセンブルクGPを名乗ったこともあった。

日本でF1ブームがにぎやかだった頃は、鈴鹿の日本GPのほかに、岡山の英田でパシフィックGPが開催されていた。サンマリノにしてもヨーロッパにしてもパシフィックにしても、苦し紛れである。パシフィックはすでに消滅したが、サンマリノもヨーロッパもいずれは消え去る運命だろう。

F1は脱ヨーロッパの流れが加速しつつあり、2004年にはバーレーンと中国でF1が初開催。これにともなって年間18戦ものレースが開催される運びとなった。F1史上、年間最多のレース数である。トルコやドバイなどもF1開催に名乗りを上げているため、伝統のある開催地といえどもうかうかしていられない状況となってきた。
(つづく)

http://www.facebook.com/serakota

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