SSブログ

【レースな世界紀行2004】その6の2 [レースな世界紀行 2004]

きっとまたブランク空きますが、今週前半は集中的にアップします。

その6の2
IRL第2戦フェニックス
アメリカ・フェニックス

マイアミのホームステッド−マイアミ・スピードウェイでもしたように、メインスタンドの最上部に陣取ってインディカーが走り回るのを眺めることにした。ホームステッドは1周が1.5マイル(約2.4km)だが、フェニックスは1マイル(約1.6km)なので、いくぶんこぢんまりしている。しているが、天から下界を見下ろすような、エラくなった気分は味わえる。

ゆえに、爽快だ。コースの向こうに乾いた大地が広がっている。大地だけじゃなくて、乾いた山も幾峰か見え、景観に変化を与えている。そして、ビールが欲しくなる。

IMG_1871_blog.jpg

しばしエラくなった気分を味わってから、グランドスタンド裏をぶらぶらと歩いた。Tシャツやキャップ、ステッカーなどのPIR公式グッズを扱うオフィシャル・マーチャンダイズ、ビールやレモネード、アイスクリーム、ハンバーガーやホットドッグ、フレンチフライ・ポテトを売るスタンドが軒を連ねている。ちなみに、16オンス(474ml)入りのビールは5ドル、チーズハンバーガーも5ドル、フレンチフライ・ポテトは4ドルだった。

こうした物販のほか、観客がモータースポーツを身近に感じられるさまざまな仕掛けがあった。シボレーとトヨタは独自に大きなテントを構え、自社が参戦する各モータースポーツ・カテゴリーの競技車両を展示している。インディカー・レースを統括するインディ・レーシング・リーグ(IRL)は、ピットクルーになった気分でタイヤ交換を体験できるアトラクション、ドライバーになった気分を味わえるテレビゲーム(展示用に作ったインディカーの運転席にモニターが設置してある)を設けて、ファンとの間にフレンドリーな関係を築こうと努力している。

IMG_1883_blog.jpg
IMG_1898_blog.jpg

どちらも閑古鳥が鳴いていたのがわびしかった。そもそも、金曜日のスタンドはガラガラである。昼時だというのに、列を作らず食べ物や飲み物を買うことができる。人気のない遊園地ほど寂しさを感じるものはないが、人気のないレース場も負けず劣らず寂しい。

IMG_1901_blog.jpg

そうした物寂しさの中で観客の人気を集めていたのが、子供用のミジェット・レースだった。大人用のミジェット・レースの4分の1くらいのサイズで、言い方を変えればパイプフレームで組んだゴーカートみたいなものだ。もっと言い方を変えれば、スーパーのショッピングカートにエンジンがついたような風情である。

そんな極小ミジェットが1周100mくらいの極小オーバルコースをぐるぐる回っている。直線などほんの20〜30m程度で、ライン取りなどは、大人用オーバルでは直線に円弧を組み合わせた長円形だが、子供用は純粋に円形になる。

この極小オーバルに6〜7台が一緒になって競い合いをするのだが、大人顔負けのデッドヒートだ。コースが狭かろうが、直線が短かろうが、前に出たければインを刺し、気合いでもって相手をひるませて思いを成し遂げる。体は内側に傾きっぱなし。左前輪は浮きっぱなしである。

白熱してくればスピンも起きる。スピンが起きれば避けきれずに衝突をする場面も出てくる。衝突をするクルマがあれば、乗り上げてジャンプをするクルマもある。でも、くじけている様子がない。見ていて清々しい。

IMG_1924_blog.jpg

この極小ミジェット、調べてみれば1/4ミジェットと書いて、クォーター・ミジェットと呼ぶ。対象は5歳から16歳。全米の57カ所にコースがあり、全米のあちらこちらにクラブがある。「気になったらいつでもどこでも声を掛けて」と宣伝している。形は小粒でも中身は立派で、4輪独立サスペンションを装備。エンジンは120ccから150cc。走るのはすべてインディカーと同様オーバルコースだが、アスファルトだけでなく、コンクリートやダートも走る。

おもしろいのは“ファミリー・スポーツ”だということだ。子供の参戦を手伝うのは、家族あるいはボランティアで、実際僕がフェニックスで目にした光景も絵に描いたようにファミリーな光景だった。おとうさんが汗を流し流しマシンのメンテナンスをし、おかあさんが子供とおとうさんの奮闘する姿を半歩下がって見守るというような。

夜はジャパニーズ・レストランに行った。店の名はミシマである。フェニックスのダウンタウンにある目的の店は、ちょっと寂れたモールの一角にあった。ぼんやり薄暗い周囲の明るさというか暗さに溶け込むように、MISHIMAの店名がイルミネーションで浮かび上がっているのだが、Sの電球が切れてMI HIMAに見える。

「ヒマだったりして」
 なんて、冗談のつもりで言ったら、
「ええ、そのとおりなんです」
と、ストレートに肯定の返事が帰ってきた。ガラスドアを開けてみると、15人は座れそうなカウンターにアメリカ人が3人。4人がけのテーブルが5つあるがすべて空席。一番奥のテーブルの上には200ピースは下らないだろうジグソーパズルがやりかけのまま放置されている。この状況をもって店の繁盛ぶり、というかヒマさ加減が想像できる。

店員は「寿司が自慢」だと言う。寿司といえば、生の魚をネタにつかう。しかして、フェニックスは海からかなり離れている。ゆえに、寿司や刺身はやめておこうという防衛心が働いた。オーダーしたのは、すき焼き定食15ドル98セント也。キリン・ビールの箸休めには、イカのフライをオーダーした。見た目はイカのフライというよりトンカツだが、味はまあまあである。食感がはんぺんみたいにグニュっとしていてとってもビミョーな食べ物である。

「いまからすき焼きお持ちします。これよかったらどうぞ?」と女将が持ってきたのが生卵。「生で卵を食べる習慣のないアメリカの卵は熱を加えるべし」とどこかで聞いたような気がしたが、「生卵なしですき焼きなんぞ食えるか」という思いの方が8対2の割合で強かった。

味はまあまあだった。イカのフライのようなビミョーな感じはなくて、すき焼きらしい味がする。しばらくして女将がやってきた。腰をかがめ、人の顔をのぞき込むようにこう言う。
「大丈夫でした?」

そういう聞き方ってありますかいな。
(つづく)

http://www.facebook.com/serakota

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:自動車

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント