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【レースな世界紀行2004】その2の2 [レースな世界紀行 2004]

もう飽きてきたんじゃないでしょうか。そんな意見にはお構いなく、続けていきましょう。ホームステッドのつづきです。

その2の2
IRLオープンテスト
アメリカ・マイアミ〜ホームステッド

ホームステッド・マイアミ・スピードウェイは、湿っぽくて白っぽくて見渡す限り茫漠たる大地のだだっ広いところにあるワケだけれども、施設の中もひたすらだだっぴろい。IRLがレースをするサーキットはどれもこれもオーバル、すなわち長円形で、ホームステッドは1周が1.5マイル、すなわち2.4kmほどである。

この2.4kmの内側にレース車両の整備をするガレージが並び、取材陣が仕事をする(フリだけの人もいる。僕も含めて)プレスルームがある。取材に訪れる人が乗り付けたクルマを止める駐車場もあれば、レース車両(インディカーと呼びます)を運んできたり、整備をする機械や道具を運んでくる長大で超大なトレーラーを止める駐車場もある。2.4kmの内側の面積が何平方メートルになるか知らないが、とにかくだだっぴろい。目に入るのは、アスファルトの路面とコンクリートの建築物とトラックとクルマと、そんなところで、至って殺風景である。

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というような場所にあって、ホンダのホスピタリティはオアシスのようだ。ヨーロッパを中心にレースを行うF1では、参戦各チームが懐具合の豊かさを誇るように(度が過ぎる、という意見もあります)豪華なホスピタリティをパドックに持ち込み、ゲストやジャーナリスト連中をもてなしているが、IRLではF1ほどにホスピタリティ文化は浸透していない。

そんな状況で、ホンダはホスピタリティを構える数少ない組織である。ほっと腰を落ち着ける場所があるのはありがたい。何よりお昼はランチをごちそうしてくれる。本来はサーキットで働くスタッフのための給仕施設を一般に開放しているわけだから、千客万来、来る者拒まずの姿勢は大盤振る舞いといえよう。スープがあってサラダがあってメインがあって(すべて日替わり)、ソフトドリンクがあってコーヒーがあってフルーツがあってデザートがあって、もうお腹いっぱいである(全部食べるからだ!)。

そんなホンダのホスピタリティで、久しぶりにロジャー安川選手に会った。前年在籍していたSAFRのシートを継続して確保することができず、松浦選手にシートを譲ったけれども、本人の努力とホンダの協力などで、アメリカン・オープン・ホイール・レースの参戦チームの中では名門に数えても誰にも叱られないはずの、チーム・レイホールと契約を結ぶことに成功。もてぎで開催される第3戦と、インディアナポリスで開催される第4戦に出場する切符を手に入れた。

シートを失ってから手に入れるまでのいきさつを聞き、さらに、第5戦以降の契約について関係各方面との協議中であるという話を聞いた僕は、2年間会わないうちにたくましく成長した安川選手の姿を見て、不覚にも涙をこぼしそうになった。

2年前に会ったときの安川選手は、IRLと並ぶアメリカン・オープン・ホイール・レースのもう一方の雄、CARTの下位カテゴリーにあたるトヨタ・アトランティック参戦に向けて闘志を燃やす若き青年であった。ちょっとしたいきさつがあって、ロサンゼルスから数百キロ北に離れたモンテレーまで、安川選手の運転するクルマの助手席に5時間だか6時間だか乗せてもらったのだが、道中、日本にいる知人に心のこもった電話をかけている様子などを見て、目を細めたものである。

だが、このとき目の前にいる安川選手の言動は内面の成長を物語っていた。腕っ節も首回りも太くなって、体つきも立派である。正真正銘、トップカテゴリーを戦うレーシングドライバーという印象を強くした。安川選手の成長ぶりを確認できたのは、今回の旅の収穫のひとつである。

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オーバルコースを走るレーシングドライバーは、左腕より右腕の方が太いという事実を発見したのも、今回の旅の収穫だった。この日のテスト終了後、レース車両を降りた高木選手が、右腕に氷嚢をあてていたのを発見したことに端を発する。

オーバルコースの曲線部分にはバンク=傾斜がついている。コースによって3度から24度の開きがあるが、ホームステッドの場合は18度から20度のバンク角がついており、ここに向かって300km/h超でもって進入していくと、遠心力の働きでもって外側(つまり進行方向右です)に向かって飛び出そうとする車両を制御する必要に迫られる。つまり、ステアリングを保持する右腕に多大な力を込めるわけだ。

もちろん、力を蓄えるために、IRLのドライバーは日頃からトレーニングを欠かさないのだが、高木選手に言わせれば「トレーニングと実際の走行では使う筋肉が違う」ため、腕が張るのだそう。安川選手にも尋ねたところ、「そうですね、レースの直後にタイトなTシャツを着ると、左の袖には腕がすっと入るのに、右腕はぱんぱんに張っていることがあります」と教えてくれた。

だが、同じ質問をルーキーの松浦選手にしたところ、「いいえ、何にも感じません」と素っ気ない返答(個人差あり、ということか)。しかも、翌日高木選手に腕のことを尋ねると、「(腕を保護する)パッドをつけたら何ともなくなりました」と、これまた素っ気ない答えであった。
(つづく)

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赤堤仙人

トップカテゴリーを戦うドライバーの誰もがトップドライバーではないということがよく分かりました。ありがと。
by 赤堤仙人 (2011-12-22 11:11) 

世良耕太

個性も含めて、いろいろですね。
by 世良耕太 (2011-12-22 19:57) 

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