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【レースな世界紀行2004】その2の1 [レースな世界紀行 2004]

「その2」はアメリカに飛びます。IRLにデビューする日本人ドライバーの動向を追うのが目的(だったのだと思います)。うーん、それにしても初々しい。

その2の1
IRLオープンテスト
アメリカ・マイアミ〜ホームステッド

1週間の日本滞在ののち、アメリカに飛んだ。マイアミに降り立つのは前年の春、F1ブラジルGP取材のためにサンパウロに行った際、2度目の乗り継ぎ地点として立ち寄って以来である。飛行機から降りて空港ロビーに出た途端、ムッとむせかえるような湿気を帯びた熱気と、英語に負けず劣らずの勢いでスペイン語が飛び交っている様子に刺激を受けた覚えがある。

初めて空港の外に出たが、1年前に初めて降り立ったときの印象と変わりはなかった。ホテルはマイアミ国際空港の近く。部屋に冷蔵庫の備え付けがないので、ガソリンスタンドで飲み物を買うことにした。なんで飲み物がイコール「ビール」なんだ、と問いつめないでくれる寛大な気持ちを持っていただきたい。

同宿者の3人がカウンターに思い思いの品物を載せると、「これも一緒に買うのか」というような調子でレジのおばさんがこう言った。「なんとかかんとかセルベッサ?」と。セルベッサとはビールを意味するスペイン語である。ことほどかように、マイアミではスペイン語が幅を利かせている(と、わずかなエピソードでもって断じてしまおう)。

マイアミと聞いて僕が思い浮かべたのは、アールデコである。アメリカン・アールデコが花開いたのは、エンパイア・ステート・ビルやクライスラービルが立つニューヨークだが、それらが全米各地に飛び立ち、風に乗ってマイアミに着地し、別の花を開いた。ダウンタウンの東側海岸寄りにはアールデコ地区なる宝庫があると、観光ガイドにも専門書にもある。

行ってみたい。

だが、そうはいかぬのである。レースな世界紀行は、観光地とは(ほとんど)無縁だからだ。空港とホテルとサーキット。ほとんどが、この3点を結ぶ直線上を行き来するだけだ。今回の旅も例外ではなく、夢にまで見たアールデコ地区をかすめることもなくフリーウェイを南下。いや、途中からトールロード(有料道路)に入って2カ所の料金所でそれぞれ75セント也を支払って40分ほども南下すると、そこはホームステッドだ。

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今回の旅の目的はいIRL(インディ・レーシング・リーグ)のオープンテストを取材することである。IRLにはホンダ、トヨタという日本の自動車メーカーが、チームにエンジンを供給している。日本人ドライバーも活躍中で、2004年は高木虎之介選手、松浦孝亮選手がフル参戦を、ロジャー安川選手が第3戦、第4戦にスポット参戦した。

本場アメリカでIRLを見るのは初めてだった。“本場”と書いたのは日本でもIRLが見られるからで、2003年から栃木県にあるツインリンクもてぎで開催されている。もてぎ+IRLの組み合わせは前年のレースで体験済みだった。

「マイアミ」とは聞こえがいいが、その実サーキットがあるのはホームステッドで、ホームステッドに来てみればわかるが、ここは茫漠たる土地としか言いようがない。見渡す限り原っぱである。いや、原っぱという表現も正確じゃなくて、湿っぽくて白っぽい土地に草がところどころ生えている。

トールロードを降りて一般道に入り、最初の角を右に曲がると、片側2車線の道路が一直線に続いている。左手はいま書いたような湿っぽくて白っぽい茫漠たる土地が広がっている。その彼方にサーキットのメインスタンドが横たわっている。まるで海に浮かぶ巨大な空母のようだ。

テストでも好タイムを連発していた高木選手に話を聞くと、「IRLは田舎だからねぇ」とぼやいていた。高木選手を持ち出したついでに彼にまつわる話を続けると、今年IRLにデビューする松浦選手とは先生と生徒の関係だったことが、今回の訪問で判明した。1999年、松浦選手がフォーミュラ・ドリームという駆け出しのレース生活を送っていた頃、高木選手はスクールの講師として若き(今でも十分若いが)松浦選手を指導していたというのである。

「その頃のコースケ君はどんなでしたか」
と質問すると、
「あの頃から良くしゃべっていたけど、今はもっとすごい」
と笑って、30歳になった先生はこう続けた。
「オレも歳とったけど、若いモンにはまだまだ負けられないよ」

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レーシングドライバーは、僕らの尺度とは違う歳の取り方をするらしい。さて、かつての先生に「負けられない」と言われたかつての生徒は、前年にIRLのテストを済ませていたけれども、そのときは借り物のクルマであった。17人のライバルが同じ土俵で一度に走る合同テストで、自分専用に仕立てられたクルマに乗るのは今回が始めてである。松浦選手のこの時の先生はもちろん高木選手ではなくて、元F1ドライバーにしてレーシングチームの代表である鈴木亜久里さんである。松浦選手は、鈴木さん率いるスーパー・アグリ・フェルナンデス・レーシング(SAFR)というチームに所属し、ホンダのエンジンを背負ってIRLに参戦する。

ちなみに、高木選手はモー・ナン・レーシングというチームに所属し、トヨタのエンジンを背負って出走する。IRLでのふたりは師弟対決であり、エンジン・メーカー同士の対決でもある。でも、当人どうしはとても仲がいい。折りたたみ式の小さい自転車に乗った松浦選手が「虎之介さーん」と声を上げながらパドックを走り回っていた。

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テスト走行を控えた松浦選手が鈴木さんとこんなやりとりをしているシーンを見かけた。
「コースケ、オーバルはな、ふつうのサーキットみたいにアウト・イン・アウトじゃだめだぞ」
「はい」
「それから、集団で走るときはバッとアクセル抜いたらだめだからな。そうすると、何台も一気に抜かれる」
「はい。少しずつ抜きます」
言われるがままじゃあない。デキル生徒は積極的に自分の意見を言う。

「ピットアウトするときに白煙を巻き上げて出るドライバーが多いじゃないですか。あれ、結局遅いと思うんですよね。ブリヂストンの浜島さんも言っていましたが、白煙を上げても結局タイヤを傷めるだけなんですって。白煙を上げてタイヤを温めたつもりでも、イエローでゆっくり走ればすぐに冷めちゃいますしね。僕は白煙を上げず、フツーにピットから出ようと思うんです」
「そうか」
 と言って、鈴木亜久里しは教え子のたくましく育った姿に目を細める。といった具合で、なんとも微笑ましい光景であった。
(つづく)

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